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2004.05.02

プレゼンを意識させる(5年・国語)

■ 定着しつつある言葉「プレゼンテーション」

 教育現場で「プレゼンテーション(略してプレゼン)」という言い方が定着しつつあると感じている。私の周辺でも、「この学習は、子どもたちのプレゼンさせましょう」という会話が行われるときがあるし、教育雑誌でも「プレゼン力を高めるには」といった特集が組まれる場合もある。
 といっても取り立てて全く新しいことを指導するというものではない。「プレゼン」という言葉は使わないまでも、今まで工夫した発表の実践は数多く行われてきたはずである。それらを改めて学習として価値づける言葉が「プレゼンテーション」だと私自身はとらえている。
 そして、担任する5年生でも「子どもたちのプレゼン力を高めるにはどうしたらいいか」と考えている。

■ 授業参観日にプレゼンの授業

 5年生の国語で、「5-1ニュースをプレゼンしよう」という学習を行った。国語の教科書の教材をベースにしたものである。一年間の学級のニュースを、一人一人が写真をプロジェクターで写しながらプレゼンするという内容である。
 この学習を行う理由は「プレゼン力を高める」他にもある。このプレゼンを行う日は今年度最後の授業参観日。つまり保護者に、この5年1組の一年間の学習ぶりを子どもたち自らが伝えることになるわけである。
 私自身は参観日の後の懇談会で、一年間の子どもたちの様子を簡単にプレゼンしようと考えていた。しかし、保護者の中には都合があって懇談会に残ることができない方もいる。また複数の学級懇談会に参加するために、教師のプレゼンを見ることができない方もいる。そこで、授業参観の時にプレゼンをすることによって、子どもたちの学習の様子も伝わると考えたのである。
 
■ まずは違いを意識させる

 今回の授業。最初の時間に子どもたちに、学習の目的を話した。次のような内容である。

・今回行う「5-1ニュースをプレゼンしよう」の学習活動の概略。
・授業参観日にプレゼンをすること。
・「発表」と「プレゼン」は違うこと。
・「プレゼン」のために、いろいろなスキルを身につけるのが今回の学習の大切なめあてであること。

 このように単元の最初に学習の目的を意識化されることにより、子どもたちの心構えも違ってくる。
 この時のポイントは、やはり「発表とプレゼンは違う」ということを意識化させることである。「プレゼンは聞き手に情報をプレゼントすること。相手が喜ぶような工夫が必要です。」というように子どもたちには話した。子どもたちは「書いていることを普通に話すだけではダメ」と理解をした。

■ プロセスで大切なこと

 プレゼンに至るまではいくつかプロセスがある。たとえば、「ニュースの素材を見つける」「ニュースに見出しをつける」「ニュース原稿を書く」「プレゼンの練習をする」といったことである。
 そのプロセスで子どもたちには、「プレゼンの原則」を強く意識化させた。いくつかの例を示す。

・伝える目的を明確にする。(この場合は「5年1組のニュースを知ってもらう」)
・伝える相手を考えて原稿を書く。(今回は友達+授業参観に来られた保護者)
・印象に残る見出しを考える。(例「雪もとける熱きラグビーバトル」・体育
のラグビー授業、「水沢小と中川小の意外な関係」・本校と交流校との話)
・一番伝えたいことは何か考える。
 
 これら一つ一つの吟味がよりよい内容のニュース原稿につながった。

■ プレゼンスキルを高める

 さて、実際のプレゼンのしかたにはいくつものスキルがある。表情、ジェスチャー、アイコンタクト、話し方、声の大きさといったことである。それらを一気に子どもたちに全部教えようとしても学習のねらいが散漫してしまう。
 今回はアイコンタクトと表情を中心に行うことにした。日々のスピーチ等の積み重ねで子どもたちは、下を見ずに顔をあげて話すことができるようになっている。しかし、視線が定まらない子、聞き手ではなく遠くを見ている子も見られる。そこで、「ターゲットを絞って視線を決めなさい。ターゲットは熱心に聞いている人です。うなずいている人を見ると気持ちもよくなるでしょう。すると表情も変わります。」と子どもたちに話した。むろん、これは事前に聞き手への指導があってのことである。
 このようなプレゼンスキルの基本をおさえて練習し、ペア学習で相互批評をして高め合い、いざ本番である。

■ 参観日当日

 さて、実際の参観日。「発表」と「プレゼン」の違いを意識し、子どもたちはベストのプレゼンをした・・・と書きたいところであるが、そうは簡単にいかなかった。
 前日の練習では、アイコンタクト・スマイルを意識し、話し方も分かりやすかった。しかし、友達の前で話すことと家の人の前で話すことはやはり違う。子どもたちにはふだんの授業と違う多くの視線が集まり、子どもたちはかなり緊張をしていた。その結果は、子どもたちの自己評価の感想から紹介する。

・最初少しきん張していて、いい表情があんまりよくできなくて残念でした。でもちゃんと大きな声とアイコンタクトはできたので良かったです。改めてニュースを伝えることは大変なんだなあと感じました。
・うまくいくと思っていたのに、きんちょうして話し方を失敗してしまいました。けれど、ニュースを聞いてみんなはあの時こう思ったんだなあとよくわかりました。みんなのニュースを聞くことができてよかったです。
・あまりきん張はしなかったけど、アイコンタクトができなかったです。今度プレゼンをする時にはアイコンタクトを意識してやりたいと思いました。友達からの感想カードはとてもうれしかったです。

 自己評価で「ばっちり、うまくいった」という子もいたが、多くの子は自分の課題点を書いていた。これはこれで子どもたちが次のステップのためにいいことではないかと考えている。次回の目標になる。
 考えてみれば大人のプレゼンにしても同様である。研究発表で、「聞き手の反応を意識せず、原稿を棒読みする」「アイコンタクトをせずパソコン画面に向かって話している」といった人を見たことがあった。
 まして子どもたちである。少々の失敗はあっても、まずはプレゼンへの一歩を踏み出したということで拍手を送りたい。なお、参観した保護者からは、子どもたちへの大きな励ましの声と一人一人への温かい拍手が送られたことを付
け加えておく。

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