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2004.07.23

見方・考え方が深まる発展的な学習を 1

■ 社会科での発展的な学習

 6年生の社会科の発展的な学習は魅力的である。
 本校で使っている教育出版の教科書には、「家康・秀吉・信長の共同記者会見を開こう」「人物事典を作ろう」「世界の文化に挑戦しよう」といったように、日常での学習と違う活動が紹介されている。
 これらは、「よりくわしく調べる活動」「体験を目的とする活動」「工夫した表現活動」の3つに大別される。この中で、子どもたちが一番興味を示すと思われるのが「体験を目的とする活動」であろう。未知の体験への魅力はやはり大きい。

■ ポイントは「活動のビフォー・アフター」

 ただ魅力的だからと言って「発展的な学習は、体験させればそれでいい」というものでもない。
 かつて「大仏作りに挑戦」という学習をしたことがあった。奈良の大仏の大きさと同じ大きさで目、鼻、口、手のひらを画用紙や模造紙で作るのである。
できた顔を壁に掲示しみんなで万歳。手のひらにも何人乗れるが試してみた。子どもたちは大喜びで取り組んだ。
 ところが、次の時間に奈良の大仏について深く追究する段階では子どもたちは大仏作りほどの意欲は示さず、苦労した記憶がある。単元全体の中での体験活動の位置づけが明確でなかったから、このような結果になったのである。
 それ以来、歴史学習で体験活動を学習に組み入れる時には、活動の前後(ビフォー・アフター)がポイントと心得ている。

 今回行う体験活動は「水墨画に挑戦しよう!」というものである。
 教科書では「室町文化に挑戦しよう」となっているが、生け花・茶の湯は経費や準備の手間がかかる。その点、水墨画は習字道具と画用紙があれば本格的とはいかないものの、体験自体なら簡単にできる。
 ポイントとなる「ビフォー」は水墨画体験への興味づけを、「アフター」は、体験後に変わったものの見方・考え方を深めるということをねらいとした。
 時間は水墨画体験が60分。事前も事後も1単位時間(45分)ずつの指導である。

■ 授業「水墨画に挑戦しよう!」

 「水墨画に挑戦しよう!」の最初の時間は、水墨画についての知識を深めることと「かきたい!」という意欲を持つのがねらいである。
 最初に「水墨画について知っていること、書かれていることを発表しなさい」と指示した。子どもたちは予備知識がほとんどない。そこで、教科書と資料集から探させた。

・絵の具を使わず、墨をといて描いた絵である。
・雪舟が画家として活躍した  
・中国から伝わった
・応仁の乱のころにはやった
・「四季山水図」といった作品がある等

 これらに加えて、雪舟の子どもの頃のエピソード(お寺で、柱にしばられて涙でねずみを描いた)を知り、子どもたちは雪舟という人物にも興味を持った。
 ある程度基礎知識が身についた後、子どもたちに教科書にある四季山水図(雪舟作)を見せる。拡大カラーコピーをしたものである。
 第一印象を聞く。

・細かい  ・すごい  ・難しい  ・人の心が表れている
・立体的  ・その時代の様子がわかる・・・等

 さらに、「何がかかれていますか」「季節はいつですか」といった発問で、四季山水図について理解を深めた。
 最後に「なぜ室町時代に、このような水墨画がはやったと思いますか?」と聞く。さすがにこれは難しく、子どもたちの反応も芳しくない。水墨画が禅宗の影響を受け、「心を静めて集中する効果」もあることを伝えると、子どもたちはその視点に新鮮さを感じていた。
 まとめとして、「水墨画の特徴についてまとめなさい」と指示した。

(例)「水墨画は墨だけを使い、風景をかいた絵であり、中国から伝わった。心をしずめる特徴を持ち、集中して描くことができる。水墨画は大切な文化である。」

 まとめを発表させた後、「君たちも水墨画をしてみたいですか?」と聞くと、「うん!」「やってみたい!」「おもしろそう!」と好感触。水墨画の基礎的な内容の検討が子どもたちの興味を高めたのである。

(つづく)

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