教材開発の成果は?
小学メールマガジンの連載原稿です
■ 子どもたちの卒業
2年間担任を続けた子どもたちが卒業する。この2年間は、学校の研究が社会を担当させてもらったこともあり、自分の教材開発では「追い風」の状態であった。このメールマガジンでも、「りんごとみかんの交流学習」「えりも岬
に緑を呼べ」「水墨画の授業」「ザビエル」「青い目の人形」等、いくつか紹介させていただいた。
私にとってはどれも印象深い実践ばかりであった。事前の教材開発も楽しかったし、もちろん授業も楽しんだ。ありがたい2年間であった。
■ ホームページのテーマの原点
さて、私にとっては成果があったと思われるが、かんじんの子どもたちはどう思っているのだろうか。ふとそういうことを考えた。
というのも、先週朝日新聞の取材を受けた時に自分のホームページの原点を思い出したからである。
「先生が『地域のよさ・日本のよさ』をホームページのテーマにしたきっかけは何ですか?」と聞かれた。新聞記者さんであるから、事前に私のホームページは時間をかけて読んできている。実践の話は多く書かれているが、なぜ
このようなテーマにしたのか知りたいということだった。確かにそのことは書いていない。
そこで私は話をした。
・12年前に教員研修でアメリカ合衆国ポートランド市に行き、1カ月ほどホームスティをしたこと
・その時に、ホストファミリーの友人らと話をした時に日本の話題になり、有名なものをあれこれ紹介した
・しかし、日本人の特性、海外に誇れるもの・人、仏教の考えについて質問された時に答えに窮してしまったこと
・その時に「自分は日本人。でも日本のことをよく知らなかった。自国のことを語れないなんて・・・」と思ったこと
・自分が教育に携わっているので、自分の経験から子どもたちには「自分の生まれた地域や日本について、自分の言葉で語れるようになってほしい」という願いを持ったということ
このようなことを話した。
この2年間、教材開発したものの多くは「地域のよさ・日本のよさ」という私のホームページにつながっている。そして子どもたちには、学びについて具体的に自分の言葉で話せるようになってほしいのだ。それが一番の成果だと思
っている。
(なお、この取材での話は4月3日と10日の朝日新聞教育欄の「せんせい」というコラムに掲載される予定である。)
■ 子どもたちにとって成果は?
では子どもたちにはどのような成果があったのか。
それらをについて考える印象深い出来事が、卒業前に二つあった。
一つは最後の授業参観前のスピーチである。参観日では「6年間の思い出スピーチ」を行った。自分が6年間で思い出に残ったことをそのままスピーチするものである。
ほとんどの子がその題材を修学旅行・文化祭・陸上記録会等の行事,クラブ,委員会に求めていた。通常はそうであろう。インパクトが強いのだから。
そのような中,「社会の授業」というテーマでスピーチをした子が何人かいた。
うち一人の子は「わたしが6年間で一番心に残ったのは,6年の社会の授業でした」で始まり、具体例としてNHK「わくわく授業」で放送されたザビエルの授業のことをあげていた。
「私は,今までそれぞれ違う見方で考えたことがなかったけど,劇をして,立場が違うだけでこんなに考えが違うことがわかりました」と話していた。
ちなみにこの子は社会科での発言は少ない。それでも,このように「社会の授業」が一番の思い出だと言っていたことが本当に嬉しかった。
そして、「ザビエルが日本に来た時にはいろいろな考えがあった。具体的に言えばそれは・・・・」と授業のことを思い出しながら、自分の言葉で言えるだろうなあと感じた。
もう一つは「子どもたちが選ぶアンコール授業」についてである。
卒業前に子どもたちが「自分たちがもう一度受けたい授業」を話し合った。その上位のうちのいくつかが、社会科の教材開発実践だったのである。「水墨画」「ザビエル」「テレビCMの分析」等であり、特に「水墨画」はもう一度描いてみたいと感じたようである。
この水墨画はただ単に描くという体験だけではなく、雪舟の「四季山水図」の分析やデジタルコンテンツでの視聴等でくわしく学習をした。子どもたちも自分の口で「水墨画は・・・」と語れるであろう。
この二つのエピソードから、印象に残った実践は子どもたちの記憶の中に強烈に残ると感じた。そして、子どもたちはそのエピソードについてある程度の説明ができるのではないかと思っている。それがこの2年間の成果と考えたい。そのような新しい教材開発をまた新しい学年で展開したい。
« 贈る言葉 | Main | 子どもたちの手紙 »
Comments