小学校MM 連載「私の教材開発物語 48回」より
■ 発展単元「北海道と沖縄県の米作り」調べ活動編
具体的な授業の様子を記す。最初の2時間は調べ活動である。次のように行った。
1 北海道と沖縄県のどちらを調べたいか決める。(ほぼ半分ずつに分かれる)
2 6人前後のグループを作る。(教師が決める)
3 調べ活動をする。
(1) 北海道は北海道の沖縄県は沖縄県の基礎的な一次資料を教師が配布する。
これで米作りの概要をつかむ。
(2) 基礎資料をもとに個々人で調べたい米作りに関わるテーマを決める。
(3) 図書館の本やインターネット等の二次資料でそのテーマについて調べ,ノートにまとめる。
4 発表の準備をする
(1) テーマについて,一人一人が発表用シート(A4用紙・1枚)にキーワードを記す。
(2) 同時に発表用の原稿を書く。
この調べる段階での特徴は次の3つである。
・グループで調べ活動をするよさを生かす
・資料を一次と二次に分ける
・全員が発表用シートを作成する
グループで調べ活動をするよさは資料を共同で使える,教え合いができるということである。同じ対象を調べる人が多いわけであるから,人数に対する図書資料は少ない。グループで,共同で調べることにより,ある程度その問題点は解消する。また,グループ活動をすることによってわからない点や進行状況を教え合うことができる。
また子どもたちには最初に一次資料を印刷し配布した。子ども用の学習参考書の資料である。そこには,都道府県別のデータが一覧され,簡単な解説が書かれている。いきなり,「テーマを決めて自分で資料を探して調べなさい」という方法もあるが,それは全員がテーマを選ぶ視点と資料を探せる学習技能を持っている時である。そうでない場合には,補助的な資料は必要と考える。
この資料によって子どもたちは,「米作りの1年」「気候と歴史」「品種」「大
変な点」「北海道の水田の多いところ」「沖縄の米作りの特徴」といったテー
マを持った。
そして調べ活動後には一人一人が発表用シートを書く。これはA4にマジックで気軽に書くことができるものである。「簡単に書ける分,効率的になるが,そのような用紙だと小さくて見えないのでは」と思われるかもしれない。
この用紙は全体の前で発表する時には,パソコンに取り込み,プロジェクターを使って拡大して投影する。子どもたちには画用紙等に大きく書くより,はっきりした発表シートとして提示できる。ITのよさの活用である。
■ 発展単元「北海道と沖縄県の米作り」発表編
子どもたちが調べた内容は,次のように発表させた。
1 同じグループ(北海道3グループ,沖縄県3グループ)で最初に発表し合う。よりくわしい内容で書かれていたグループが代表となる。
2 代表グループの一つずつが全体で発表する。発表後,同じグループの中で付け加えをする。
3 相手グループから質問や感想を受ける。
代表グループの発表+同グループからの付け加えによって,子どもたちの調べたことのほとんどは発表できる。また相手グループの発表を聞くことによって,最終的には自分の調べたものと聞いたもの(つまり,北海道と沖縄県の両方の米作り)について知識を得ることができる。
子どもたちの調べた主な内容は次の通りである。
□北海道の米作りグループ
・寒い気候のため,農業にはきびしい条件である。
・米の収穫量は全国でトップレベル。
・明治時代から外国から技術を取り入れた。
・Aランキングの「きらら397」が多く作付けされている。
・ビニルハウスでの苗作りといったように工夫をしている。
□沖縄県の米作りグループ
・暖かい気候であるが,台風や害虫の発生が多いため収穫量も多くない。
・岩手と同じように「ひとめぼれ」の生産が多い。
・二期作も行われている。
・二期作の場合には3月に田植えをスタートする。
子どもたちは,北海道と沖縄県のそれぞれの米作りの特色とその違いを理解することができた。
■ 発展単元「北海道と沖縄県の米作り」話し合い編
発表をしただけでは,子どもたちの社会的なものの見方・考え方は深まらない。そこで次のような発問を行う。
「北海道と沖縄県の米作りで同じ点は何でしょうか」
子どもたちは一瞬「えっ?」といった表情である。それはそうだ。気候が違うから米作りも違うと今理解したばかりだ。
しばしの沈黙が続く。このような沈黙が私は好きだ。子どもたちが一生懸命に思考活動をしているのが,伝わってくるからだ。
やがて一人の子が発言する。
「北海道は寒いです。沖縄は暖かくて害虫が発生しやすいです。どちらも米作りにはきびしい条件です」
「付け加えて,きびしい条件でも一生懸命に米作りをしています」
「そうそう,どちらも努力をしています」
「条件に合わせて工夫をしています」
どの子どもたちも,「自分たちの地域の気候や条件がどうであっても,努力や工夫をして米作りをしている」という共通点に気づいていった。沈黙の時の子どもたちの表情が「なるほど」と変化をしてくるのがわかった。
このようにして終わった今年度初めての社会の発展的な学習。昨年度(6年生)は「水墨画に挑戦!」「ザビエルは日本を変えたか」等の発展的な学習ができたが,今年度はどのような実践ができるか楽しみである。
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