北海道と沖縄県の米作り その1
小学校メールマガジン連載 「私の教材開発物語」 第48回より
■ 発展的な学習
社会科の教科書(5年・教育出版)を見ると「発展的な学習」がいつか紹介をされている。「世界でつくられている穀物を調べよう」「新しいエネルギー資源を見直そう」「物づくりに情熱をかけた人たちに学ぼう」といった内容である。
このような内容を見るだけで,教材開発を生きがいにしている私はとてもわくわくしてくる。「教科書にある内容で行うのもいいが,やはり自分で考えて行うのもいいなあ」と思う。
5年生の最初の単元「農業のさかんな地域をたずねて」の米作りに関わる学習が一通り終わった。そこで,発展的な学習として何かしらの実践をしようと考えた。
「お米についての興味関心を高めるために,世界の米と米料理を調べるのはどうだろうか」
「農薬について興味を示す子が結構いたから,農薬使用賛成と反対の立場で討論をしてみようか」
というようなアイデアが浮かぶ。
■ 各地の都道府県を対象とする
社会科の場合に発展的な学習を粗く2つに分ければ,「内容を広げるパターン」と「内容を深めるパターン」に分かれる。先のアイデア例で言えば,世界の米と米料理は広げるパターンで,農薬の討論は深めるパターンである。
今回は深めるパターンで行こうと考えた。一つの社会事象をみんなで話し合いながら追究することの面白さを最初の単元で感じてほしかったからである。
発展的な学習の時間は3時間。自分は日本各地の米作りをテーマにすることにした。これは,単元の最初の時間に何人かの子たちが,「岩手の米作りはどのようになっているのか」「他の都道府県の米作りの様子は」「米作りは全国各地でちがうのか」といった問いを出しており,それらのことが頭にあったからである。
教科書の例は新潟県である。岩手の米作りも新潟に似ているということで,子どもたちに,「新潟県と岩手県以外で,米作りを調べたい都道府県はどこですか?」と聞いた。
すると子どもたちから出てきたもので圧倒的に多いのは北海道と沖縄県であった。理由を聞くと,次のようなものが出てきた。
・日本で一番寒い地方でどのような工夫が行われているか。
・雪が多いのに米作りで不便なことはないのか調べたい。
・沖縄は暖かいのに米の収穫量が少ないのはなぜか。
・暖かさを利用した工夫があるのではないか。
他にも「東京都(東京では米作りが行われているのか)」「香川県(面積が狭い県で工夫があるのではないか)」があげられた。
■ どのようにして「深める」構成にするか
「北海道と沖縄県の米作りへの興味が高い」という実態から,調べる対象をこの2つだけに絞ることにした。
子どもたちの希望したものをそのまま調べるという方法ももちろんある。しかし,資料面の確保や個人での活動の大変さを考えると限られた時間では困難が伴う。その点,対象を絞ることによって,グループ化ができ,そこでの学び合いのよさが生かせる。
さらに一番のポイントは,北海道と沖縄県の米作りを学級全員で比較・検討できるメリットが大きいということである。米作りでは違う点の方が多いのだが,「自分たちの地域の気候や条件がどうであっても,努力や工夫をして米作りをしている」という共通点に最後は気づかせることができる。これこそ,今年のテーマである「社会的なものの見方や考え方を育てる」ことにつながると感じた。
これこそ発展的な学習で深める内容である。(つづく)
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