授業成立の基礎技術 指示
授業成立メールマガジンに掲載した原稿です。
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授業成立プロジェクトリーダーである上條晴夫氏の新著が『子どものやる気と集中力を引き出す授業 30のコツ』(学事出版)です。
その中に「授業づくりの基礎技術 10のアイテム」という章があります。この授業スキル号では,この10の基礎技術を「紹介プラス具体例」という形でお伝えしたいと思います。今回はその5回目。指示です。
上條氏は指示の大事な技術として次の2つをあげています。
・一時に一事を指示せよ
・AさせたいならBと言え
「一時に一事」は向山洋一氏が『授業の腕をあげる法則』(明治図書)で広めたものです。私は初任の時にこの技術を知って、さっそく教室で試してみました。子どもたちの動きが激変したのに驚きました。
たとえば、身の回りやロッカーの整理整頓をさせるのに、「最初に机の中を整理整頓します。机の中のいらないものは捨てましょう。次に机のわきに習字道具をかけている人はロッカーに戻します。そして・・・」といった指示をしていました。当然、指示の途中で動き出す子がいます。「待ちなさい!全部話してからです」といった注意を言う。指示後も覚えきれない子どもは、指示と違った行動をします。するとまた注意です。
それが「一時に一事」を徹底するだけで、子どもたちがきちんと行動します。行動の後、子どもたちをほめることができます。その効果に驚いたと同時に、「指示」の重要性は改めて感じました。
これは授業でも同様です。発問の後の指示は重要です。「この絵から気づいたことは何ですか」と発問をした後に、どういう指示を出すか。「発表しなさい」でも、「ノートに書きなさい」でもいいです。明確な指示を出すことが授業成立にとっては重要です。
「AさせたいならBと言え」は岩下修氏が『「指示」の明確化で授業はよくなる』(明治図書)で提案したものです。確かにさせたいことをストレートに言うのなら誰でもできます。それを違う言葉で言って子どもたちを変えるのがプロです。
たとえば、リコーダー指導で口のつけ方や息の入れ方を指導する時に、「小さなシャボン玉を少しずつふくらますように吹いてごらんなさい」という指示がたいへん効果があったと岩下氏は述べています。
確かに「ゆっくり息を入れなさい」といってもどれくらい入れたらいいか子どもたちは想像がつきません。その点、シャボン玉をふくらます経験を思い出す指示は子どもたちはイメージしやすいです。似たものとして、有田和正氏の「鉛筆の先から煙が出るくらい速く書きなさい」という指示はあまりにも有名です。
「子どもたちが具体的にイメージできること」がこのような「AさせたいならBと言え」という指示では大切なことがわかります。
次回取り上げるのは「指名」です。
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