自分が編集長を務めるメールマガジン「授業成立プロジェクト」の原稿である。
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模擬授業での導入から学ぶ 佐藤 正寿
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■ 導入をどうするか
9月24日、京都橘大学の児童教育学科開設記念シンポジウムに講師として参加をした。テーマは「授業の達人に学ぶ15分の可能性-こどもは一日でどのくらい成長するのだろうか?-」である。
「15分」という数字からわかるように、このシンポジウムの最初に模擬授業を行うことになっている。テーマは漢字指導。授業者は私を含めて4人である。
「これは導入がポイント」と思った。
もし皆さんが同じ立場なら、授業の導入をどのように行うであろうか。
私がよく行うパターンは、集中させるために、実物を持ち込んで興味を引くという方法である。今まで見たことのないものだったら、子どもたちが「ワー、さわってみたい」と言って盛り上がる。「昨日は何について学習しましたか」と前時の復習をしたり、本時に関わりのある話題をふったりして、子どもたちの発言を引き出すという方法もよく行う。
しかし、今回は漢字指導。しかも初対面の学生さん(大学生)が模擬授業のお相手。通常の方法ではない導入を考えなければいけない。
■ 「木のつく漢字」を集める
模擬授業を考えるにあたって、数多くの文献にあたった。その中で導入としてピンと来たのが「木のつく漢字」を集めるというものだった。これは、上條晴夫氏が『授業でつかえる漢字あそびベスト50』(民衆社)の中に書
いていたものである。「林」「休」「査」といったように木のつく漢字はたくさんあり、それらを集めるというシンプルなゲームである。
導入に選んだ理由は次のようなものである。
・説明が容易。例示も簡単にできる。
・答えのハードルが低い。導入として取り組みやすい。
・たくさん答えを書くことによる達成感が味わえる。
・発表もスムーズにできる。
・他の子の答え(なかなか見つけられないもの)に共感できる。
実際の模擬授業で行った時には、先のよさが全部出た。15分のうちの5分間で学生さんたちは熱中して取り組んだ。そういう雰囲気であれば、授業もしやすい。残りは次のような内容を行った。
□ 「果」「巣」「桜」「梅」といった木のつく漢字の成り立ちを考えさせる
□ 「森」のように3つ重なった漢字について考えさせる(品、晶、轟など)
□ 3つ重なった漢字を創作し、発表させる
■ 他の先生方の導入から学ぶ
私の他の3人の先生方の導入は見事であった。
学生さんとコミュニケーションを深めるために、タッチ式の挨拶をしたり拍手をしたりする先生。フラッシュカードでテンポよく授業に入る先生。一気に学生さんたちは、集中していった。まさに教師のワザである。
『授業導入100のアイデア』(上條晴夫編著・たんぽぽ社)の中で上條氏は、「最近の子どもたちは、授業冒頭の『緊張度』が低くなってきている。いま授業導入にはサービス精神が必要になってきている」と解説をしている。そして、「教師のキャラクター」「子どもとの距離感」「教室の空気」の3つの観点から使い分けていくことを勧めている。
今回のシンポジウムでは、自分自身の導入や他の先生方の工夫によって、先の3観点からの実践を目の当たりにすることができた。同時にそれは、導入指導の基礎技術を学ぶことにつながった。
その点で、このように模擬授業を含んだセミナーは大きな価値があった。
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