« 私の教材開発物語 | Main | ダンボールカッター »

2006.10.20

模擬授業での導入から学ぶ

自分が編集長を務めるメールマガジン「授業成立プロジェクト」の原稿である。

---------------------------------------------------
模擬授業での導入から学ぶ            佐藤 正寿
--------------------------------------------------

■ 導入をどうするか

 9月24日、京都橘大学の児童教育学科開設記念シンポジウムに講師として参加をした。テーマは「授業の達人に学ぶ15分の可能性-こどもは一日でどのくらい成長するのだろうか?-」である。
 「15分」という数字からわかるように、このシンポジウムの最初に模擬授業を行うことになっている。テーマは漢字指導。授業者は私を含めて4人である。
 「これは導入がポイント」と思った。
 もし皆さんが同じ立場なら、授業の導入をどのように行うであろうか。

 私がよく行うパターンは、集中させるために、実物を持ち込んで興味を引くという方法である。今まで見たことのないものだったら、子どもたちが「ワー、さわってみたい」と言って盛り上がる。「昨日は何について学習しましたか」と前時の復習をしたり、本時に関わりのある話題をふったりして、子どもたちの発言を引き出すという方法もよく行う。
 しかし、今回は漢字指導。しかも初対面の学生さん(大学生)が模擬授業のお相手。通常の方法ではない導入を考えなければいけない。

■ 「木のつく漢字」を集める

 模擬授業を考えるにあたって、数多くの文献にあたった。その中で導入としてピンと来たのが「木のつく漢字」を集めるというものだった。これは、上條晴夫氏が『授業でつかえる漢字あそびベスト50』(民衆社)の中に書
いていたものである。「林」「休」「査」といったように木のつく漢字はたくさんあり、それらを集めるというシンプルなゲームである。
 導入に選んだ理由は次のようなものである。

・説明が容易。例示も簡単にできる。
・答えのハードルが低い。導入として取り組みやすい。
・たくさん答えを書くことによる達成感が味わえる。
・発表もスムーズにできる。
・他の子の答え(なかなか見つけられないもの)に共感できる。

 実際の模擬授業で行った時には、先のよさが全部出た。15分のうちの5分間で学生さんたちは熱中して取り組んだ。そういう雰囲気であれば、授業もしやすい。残りは次のような内容を行った。

□ 「果」「巣」「桜」「梅」といった木のつく漢字の成り立ちを考えさせる
□ 「森」のように3つ重なった漢字について考えさせる(品、晶、轟など)
□ 3つ重なった漢字を創作し、発表させる

■ 他の先生方の導入から学ぶ

 私の他の3人の先生方の導入は見事であった。
 学生さんとコミュニケーションを深めるために、タッチ式の挨拶をしたり拍手をしたりする先生。フラッシュカードでテンポよく授業に入る先生。一気に学生さんたちは、集中していった。まさに教師のワザである。

 『授業導入100のアイデア』(上條晴夫編著・たんぽぽ社)の中で上條氏は、「最近の子どもたちは、授業冒頭の『緊張度』が低くなってきている。いま授業導入にはサービス精神が必要になってきている」と解説をしている。そして、「教師のキャラクター」「子どもとの距離感」「教室の空気」の3つの観点から使い分けていくことを勧めている。

 今回のシンポジウムでは、自分自身の導入や他の先生方の工夫によって、先の3観点からの実践を目の当たりにすることができた。同時にそれは、導入指導の基礎技術を学ぶことにつながった。
 その点で、このように模擬授業を含んだセミナーは大きな価値があった。

|

« 私の教材開発物語 | Main | ダンボールカッター »

Comments

京都橘大学児童教育学科開設記念シンポジュームでは、大変お世話になりました。まさに、その15分のためにたっぷりの準備の時間を割いて頂き、感謝しております。

シンポジュームのときに、佐藤先生が
「この授業のために20年間買い続けている国語の教育雑誌を見直してみたところ、漢字の特集は10回程度しかありませんでした」
のような話をされていました。

学生はここをさらっと聞き逃しているようでしたので、その後の授業でここの言葉の凄さを説明しました。

『この15分のために、君らが生まれて、今日まで生き続けている間ずっと買い続けている雑誌を見直して作っている授業なんだよ。どんな準備だったか想像できる?』

学生は、改めてその凄さに気がついたようでした。

           ◆

導入についても、まさにその通りで4人の先生が連続して行うと言うことは、最初にどのように自分の世界を作るかと言うことで、その部分の展開というか、重点の置き方がポイントになると考えていましたので、これも後で学生にフォローを入れておきました。

私も今、高校生へのガイダンスなどで、自分の専門のストライクゾーンではないところのテーマ等について模擬授業を行うことがあるのですが、授業をつくるという発想でこれまで取り組んできたのが多少は役に立ち、調べて、構成して、実際に行うという流れでなんとかできます。

佐藤先生が国語の専門ではないということを学生が知った時に、
『だから、授業は作るものなんだよ』
と話すことができました。

ありがとうございました。

Posted by: 池田修 | 2006.10.22 at 15:37

池田先生、ロング・コメント、ありがとうございました。
20年間といえば、確かに学生さんにすれば生まれてからずっとですね。改めて自分の教職歴の長さを感じてしまいました(笑)。

大学の講義でシンポジュームのことを話されたことによって、学びの価値は2倍、3倍になりますね。学生さんのためにも、これからもシンポジュームを続ければいいなと思っています。
ありがとうございました。

Posted by: サトマサ | 2006.10.22 at 17:33

前田です。
会後名刺交換させていただきました。

私たちのように塾の教師なら,なおのこと時間の縛りがタイトなので,あの「15分」いや,私は「10分」に短縮(凝縮)して自分の授業を見直すようになりました。

とても,有意義な時間でした。

池田先生とはお話できませんでしたが,見事なコーディネイトでした。

ご近所なので,土作先生と今度ゆっくりお会いする予定です。

Posted by: まえだ | 2006.10.22 at 23:46

まえださん、コメントありがとうございました。10分は凝縮された時間ですね。確かに。私たち小学校教員は「次の時間までちょっと伸ばす」ということもできますが、学習塾は別ですね。時間に対する厳しさを感じます。ありがとうございました。

Posted by: サトマサ | 2006.10.23 at 08:56

前田さん、池田です。

私も学生時代4年間塾の講師をしていた経験があります。
一週間に一回の授業、さらに夏の講習会での集中した時間。
あの時の経験は、いまも役に立っています。

関西と言うことでお近くですね。
これからもよろしくお願いいたします。

Posted by: 池田修 | 2006.10.24 at 10:31

私は大学を卒業してから1年間、学習塾に勤めていました。6教室あるうちの3教室で主として中学校社会を教えていました。仕事のしかたで塾長に何度も怒られていました・・・。今となってはいい思い出です。

Posted by: サトマサ | 2006.10.24 at 13:28

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 私の教材開発物語 | Main | ダンボールカッター »