郷土芸能伝承の誇り
とある新聞の地方版にコラムを定期的に書いている。今回執筆したものを紹介する。
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郷土芸能伝承の誇り
今年度から奥州市立広瀬小学校へ異動となった。水と緑に囲まれた地域にある全校児童五十一名の小規模校である。
転勤してその学校の特色を感じる行事は、五月にある運動会である。紅白リレーや玉入れ等の運動会の定番競技と共に、本校では「広小剣舞(ひろしょうけんばい)」が披露される。
もともと学区は郷土芸能の盛んな地である。学校近くの国道沿いには、「人と自然・光り輝く郷土芸能伝承の郷」という看板が輝いている。剣舞だけではなく、鹿踊や人形芝居といった多くの伝統芸能が代々引き継がれてきた。
広瀬小学校でも、学区の特色である郷土芸能を引き継ごうと、三十数年前から「広小剣舞」を地元の鴨沢念仏剣舞保存会の指導を受けながら取り組んでいる。
運動会に向けた練習の段階でこの剣舞を初めて見たのであるが、その時の子どもたちの迫力に圧倒された。 思わず、本番ではどれだけすばらしいのだろうかと想像をしたほどだった。
さて、広小剣舞では子どもたちは多くの衣裳と道具を身に付ける。自分たちで着ることは難しいから時間をかけて家の人に着せてもらう。衣装を身に付けた子どもたちは、まさに「郷土芸能の伝承者」そのものである。家の人たちも誇りをもって我が子や孫を晴れの舞台に送り出す。
運動会の本番は「勇壮」の一言に尽きるものだった。子どもたちが一心不乱に伝統の舞を披露する姿に、見ていた地域の皆さんから、大きな拍手が送られた。それは郷土芸能をしっかりと引き継いでいる子どもたちへのエールと言えるものだった。
地域に伝わる郷土芸能とそれを受け継ぐ誇り。子どもたちはその誇りをもちながら郷土芸能を代々伝えていくに違いないと確信した。
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