教育実習の日々2
昨日の続きです。
■ 気になる子
考えてみると、私が教育実習に行ってから16年も経つが、子供たちの名前はけっこうすらすら出てくる。
担任の先生に「学級委員長がそんな態度でどうする!」とよく怒られていた大川君(仮名)。
私の家庭科の授業で子どもがなかなか集中せず「まさとし先生がかわいそうだった」と言ってくれた仲田ヨシノさん。(仮名)いつも、ひょうきんなことを言って、実習生たちを笑わせてくれた西君(仮名)・・・・といったようにである。
ところが逆に名前は忘れてしまったが、その子の発言や表情を特に覚えている子がいる。
その女の子は、実習生の誰に対しても心を開くことがなかった。それどころか、何か話しかけると怒ったりするものだから、実習生の中には、「私、あの子には話しかけたくない」と言う者も出る始末だった。
その子はマラソンが得意だった。ちょうど実習期間中にマラソン大会があり、その子は2位に入った。
廊下でその子に会った時に、私は「2位になってよかったね」と声をかけた。そうしたら、その子はニコリともせず、「(1位になれない)イヤミだ、イヤミだ」とつぶやいて怒るように走って行った。
私もムッとしたが、その場はそれで終わった。
実習最後の日、子供たちが実習生全員に書いた手紙をもらった。その子がどんなことを書いているか興味があった。読んでみると・・・。
「マラソン大会のことで、声をかけてくれてありがとう。わたしはなかなか自分から先生たちと 話ができません。だからとてもうれしかったです。」
実習生に対するすねた態度は、「自分にも声をかけてほしい」というサインだったのである。
子供たちは、誰でも先生と話したがっている。そして、先生にどんな態度をとっても、子供たちは教師の声がけを待っているものなのだ、ということを感じさせてくれた子であった。
■ 担任の思い
中学校の教育実習はわずか1週間であった。
そのころは「荒れる中学生」という言葉がマスコミをにぎわせ、校内暴力の嵐が全国に吹き荒れていた。大学の教官からは、「あなたたちが教壇に立つ頃は、小学校高学年で校内暴力があるかもしれない。」と脅かされたりしたものであった。
さて、その中学校は校内暴力はないものの、あまりよいとは言えない状態であった。
3年生の学級に配属されたが、まず担任の話を聞こうとしない。帰りの会など、平気で席を立ったり、変な声をあげたりしている。
担任の女の先生が、「静かにしなさい!」と声をふりしぼっても、子供たちには関係なし。日直の「さようなら」という声で、教室は飛び出すように出ていってしまう。私たちはビックリしてしまった。
その様子を見たのは実習初日。放課後、担任の先生との打ち合わせがあった。
さぞかし、「困ったものです」といった言葉が出てくるのかと思った。ところが、その先生は開口一番、次のように言われた。
「あの子たちは、一人一人見るととてもいい子たちです。ただ、集団になると歯止めがきかなくな るだけです。」
確かに一人一人と話をするととても感じがよい。担任の言っている意味が、わずか1週間であったが、よくわかった。
「子供たちを信じる」・・・たとえ、どんな状況でも担任である限り、このことは大切にしなければいけない。そんなことを感じさせてくれた中学校の教育実習だった。
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