6年生学級通信 その2
【HP移行のためのリバイバル掲載です】
インターネットという資料収集手段ができなかったころの実践です。これは、これで味わいがあったなと、今考えると思います。(後戻りはできませんが)
学級通信 カルチェ・ラタン 第98号 12月14日
世界に向けて発信!
社会科の学習の一つに「世界の中の日本」という単元があります。いわゆる国際理解教育です。
3学期に主として学習をするのですが、そのための興味づけとして、子供たちに「大使館への手紙」の授業をしました。
まず、最初に子供たちに聞きました。
「『外国』という言葉を聞いて、どこの国を連想しますか」
学級で合計すると1位アメリカ合衆国(圧倒的!)、2位オーストラリア、3位中国、続いてロシアという結果でした。いずれも大国ばかりですし、マスコミでもよく名前の出てくる国です。これは、私も予想していた通りです。
そこで次のように言いました。
みんなは日本の歴史を学習しました。その中で日本と昔からつながりのあった国はどこでしたか。朝鮮、モンゴル、中国といったアジアの国々でしたね。そこで まずは一人一人がアジアの中の希望する国を選んで学習をしましょう。
教室に地球儀を持ち込んでいました。それをもとに子供たちはアジアの国々の中でどこがいいかさっそく考え始めました。
子供たちが選んだのは次の通りです。(それぞれ「よく聞くけど実はあまり知らないから」「〇〇という有名なものがあるから」といった確かな理由で選びました。)
シンガポール(児童名略・以下同様)、マレーシア、タイ、フィリピン、モンゴル、ネパール、ブータン、大韓民国、インド
さて、問題はその調査方法です。
「どのようにして調べたらいいですか」と聞くと、「外国人に聞いたらいい」「外国の資料館があったら、行って聞く」といった答えが返ってきました。
もっともです。でも子供たちは、それは不可能と思っています。
そこで、私は言いました。
「でも、できるのです!」
実は、各国大使館に資料を請求すると資料が送られてくるのです。
大使館というのは、公務が忙しいのですが、地方の一小学生からの要望にもきめ細かく対応してくれることが多いのです。
というわけで、さっそく右のような手紙(略)を書きました。
さっそく発送。1ヶ月ぐらいかかって、きっと多くの大使館からの返事が届くことでしょう。
今から楽しみです。
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各国大使館からの返信に子供たちは感激していました。
学級通信 カルチェ・ラタン 第103号 12月22日
世界からの返信
「カルチェ・ラタン」98号で紹介した大使館あての資料請求。さっそく返信が続々と届いています。
第1号の返信は何と17日でした。お願いの請求の手紙を発送したのが11日です。1週間も待たずに返事がきたのです。このスピードぶりには、驚くばかりです。
きっと大使館の職員の皆様はお忙しいので、「すぐにできることはその場でする」というのが、仕事上のモットーなのでしょう。私も見習いたいです。
送られてきたものは次の通りです。
■マレイシア大使館より・・・パンフレット、観光ガイド
■大韓民国大使館より・・・本2冊
■フィリピン大使館より・・・観光パンフレット
■シンガポール大使館より・・・資料のコピー、マーライオンシール
■インドネシア大使館より・・・資料のコピー、観光パンフレット
■フィジー大使館より・・・観光ガイドブック
■タイ王国大使館・・・資料のコピー
特に感激したのは、大韓民国とマレイシア大使館の便りです。
資料を送ってくださるので十分なのですが、子供たちあての簡単な手紙まで添えられていたのです(本物の通信では紹介しましたが、ここでは略)。これには感謝の気持ちでいっぱいです。
また、フィジー大使館からの本は見ごたえがありました。子供たちも鮮やかな本の表紙を見た時には、「すごい!」と声をあげていました。もっとも、「すべて英語で書かれているよ」と言った時には、ズッコケでいましたが・・・(笑)。
正直なところ、冬休み中に返信がきて、3学期明けに礼状を書くことになるかな・・・と思っていました。
しかし、これだけのスピード。そして、これだけの資料にさっそく書かなければいけないなあと思っています。感謝の気持ちからです。
子供たちもなかなか礼状を書く機会は少ないと思われます。マナーの一つとして、この機会を利用してぜひ書かせたいと思います。
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卒業の日、私からの贈り物は、子供たち一人一人への「贈る言葉」です。学級通信4~5枚になりました。特別に上質紙に印刷をして、白い封筒に入れます。
学級通信 ロマン・シューレ 第218号 3月18日
贈る言葉 ①
卒業の日。最後の通信。君たちへの「贈る言葉」です。
■Aくん
音楽のテストで君が歌ったあと、必ず学級は「オーッ」という歓声につつまれた。もちろん上手だからだ。何せ実力は市内一、県でも有数の君のこと。でも、それに至るまでには君も努力したはずだ。何もしないで、歌がうまくなるわけがない。そういう点では、努力の意味を君はよくわかっている。これからは、その努力を他のことに広げることが一番大切!
■Bくん
舞台は運動会、あるいは球技大会。がんばる選手たち。盛り上がる応援団。いつもその輪の中心に君はいた。あらん限りの声をふりしぼり、「何やってんだ!」「いいぞー!」と仲間を勇気づける励ましを君は言っていた。君の声や手拍子で、どれだけ学級がまとまったことか。みんなもそれは知っている。「明るさの配達人」-それを中学校でも生かしてほしい。
■Cくん
何の授業の時にも、「熱心」という言葉があてはまる君。質問もしょっちゅうしていたし、発表も積極的。跳び箱では「先生、みてください!」と言う。しかし、一番印象に残っているのは別のことだ。歌を歌う時の君の表情がそれだ。意外と思うだろう。真剣な表情、真剣な歌いぶりは人の心を打つものだ。そして、それはいつまでも人々の記憶に残っていく。
■Dくん
誰もが認める君の運動神経。運動会、陸上記録会、そしてミニバス。いつもトップを走り続けていた。しかし、それ以上に評価したいのは君が学校のリーダーになろうと思っていた点だ。企画委員の仕事をやりとおした経験は、スポーツとはまた別の価値がある。自分たちで仕事を考え、うまくいかない時には別の方法を考える。難しいことだけど、よくやり遂げたと思う。
■Eくん
「6年1組は楽しかった」とほとんどのクラスメートは答えるはずだ。その理由の一つに、「お楽しみ会が多かった」ということがあげられる。そして、それらの活動は君抜きには考えられない。企画力、仕事の段取りなどは、授業で教える機会は少ない。どこから、あんな力を得たのか。そして、時間の使い方の上手さ。ビジネスマン顔負けだった。
■Fくん
君が自立していると思ったのは、図画の時間だ。文化祭の絵。多くの子たちが、2~3人で同じ場所で風景画を描くのに、君は学校の坂に一人でいた。自分だけの絵にするために、納得のいく場所を選び、一人黙々と画用紙に向かう。考えてみれば、孤独な作業である。しかし、多くの芸術は孤独の中から生まれたのだ。それを知っていた君は、もはや芸術家だ。
■Gくん
言葉遣いがきちんとできる人は信用される。この2年間で君の一番変わった部分は、その言葉遣いである。ただ、丁寧というのではない。オアシス(オハヨウゴザイマス、アリガトウゴザイマシタ、シツレイシマス、スミマセン)が完璧なのだ。こちらが元気になる挨拶はなかなかできない。そして、感謝の気持ちを持っていても、それを態度に表さない限り人には伝わらない。君はそれができた。
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学級通信 ロマン・シューレ 第219号 3月18日
贈る言葉 ②
■Hくん
他の先生方が言う。君の目が変わったと。落ち着きのある優しい目になったと。それは以前の君を否定しているわけではない。人間は、成長すればするほど目が変わって、いくものなのだ。今考えると、水泳強化練習は自分を鍛えるいい場だった。そして、それに君は一生懸命に参加した。自分で自分を変えるチャンスを君自身が生かしたのだ。
■Iくん
正直に言おう。5年生の時の水泳強化練習の時、君が厳しい練習にどこまでついていけるか不安だった。それが、一日も休まず練習をした。それが、6年生の時に実を結び、選手になった。それだけで十分と思ったが、市内6位と入賞を果たした。スタート台で緊張しきったあの表情が忘れない。同時に、ゴールでタッチした直後の満足そうな顔も。
■J子さん
君は読書家。誰も認めるところだ。平均一日一冊のペース。5年生の時にも驚いたが、6年生でもそのペースは変わらなかった。そして、私が感心するのは、忙しい中で上手に時間をやりくりしている点だ。合唱クラブも、おけいこごとも並行して読書する。しかも、中途半端にしたのは一つもない。君のその徹底ぶり、今後の何事にも通用することだ。
■K子さん
君に「代表委員をやって」と私は気軽に頼んだ。「エッ」と一瞬困った表情をしたことを今でも覚えている。ところが、実際になってみるときちんと自分の責任で仕事をしてくれた。それもそのはず。君は水槽が汚くなってくると、いつの間にか水を交換してくれていた。寒い中、係でもないのに・・・細かなことによく気付く人は責任感ももちろんあるのだ。
■L子さん
君は最初、自分に自信がなさそうだった。自分を出すことを遠慮しているように見えた。でもそうではなかった。活躍の場が与えられると、どんどん積極的になってきた。君の活躍の場は、6年生では陸上だった。4月から朝練習をはじめて、10月までやり通した。陸上競技場で走る君は、何と大きかったことか。自信はその人を大きく見せるものだと感じた。
■M子さん
君は、何ごとにもズバリと言う。誰が相手でも構わない。たとえ、学級のやんちゃな男の子でも、言うべきことを言っていた。自分の考えがしっかりしていなければできないことだ。それがふだんの生活だけでなく、学級会でどんどん出るようになってきたことを嬉しく思った。一人一人の個性が輝いてこそいい学級だ。君の個性も、学級で光っていた。
■N子さん
努力の人。今まで君に言い続けてきた言葉だ。聞き飽きたかもしれない。しかし、あえてまた言おう。君は本当に努力の人だ。それも、人に言われての努力ではない。すべて自分で考えて、努力するというの点が尊いのだ。だから、君は自分の人生を切り開いていくであろう。それは、努力という財産が君にあるからできることなのだ。
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学級通信 ロマン・シューレ 第222号 3月18日
贈る言葉 3
■O子さん
君の物事を見る目はとても温かい。いつも日記を読んでそう思った。人を見る時にいつも、「よい点」を見ていた。人間の本性からすれば、人の悪い点ばかり目につきやすいのに。そういう点では、卒業文集の「クラスNO.1」というのは、君にぴったりの仕事だった。読んでいて、人を見る鋭さ、そして温かさがよく伝わってくる。その温かさをいつまでも。
■P子さん
水泳は疲れるスポーツだ。それを4種目も泳ぐのが個人メドレー。練習で何度も立ってしまう君。ゴールしたあと、へとへとになって座り込んだこともあった。それがどうだろう。回数を重ねるごとに立つ回数が減る。記録は伸びる。その結果が、県小学校標準記録突破。君がこれから困難にあった時は、この時のことを思い浮かべればこわいものなしである。
■Q子さん
6年生、1学期途中からの転校。君にとって心理的に負担だったと思う。私も心配した。しかし、すぐに君がミニバスに入ったということを聞いた。練習は半端ではない。「大丈夫かな」とまた心配した。しかし、それは不要だった。君にはよきミニバス仲間ができ、どんどん君は話すようになってきた。君は短い間に自分自身を変えていったのだ。
昨日、教え子から手紙が届いた。
10年前、初任で担任した子からだ。背が一番低かった子。しかも泣き虫。勉強や運動が得意なわけではなかったが、よく努力をする子だった。
彼女も今は高校3年生。卒業式を終えたばかりだ。
手紙には、高校生活が充実していたこと、4月からいよいよ会社で働くこと、そのために自動車免許をとろうとしていることなどが書かれていた。それは教え子からの手紙というよりも私の友達からの手紙という感じだった。
君たちとも同じだと思う。今までは担任と児童という関係だった。その関係もこの3月でおしまいだ。
しかし、もうすべての縁がきれるわけではない。むしろ新たな関係になると考えた方がいい。どんな関係か。それは、「一人の人間と一人の人間の関係」である。
いずれ、君たちも青春を迎え、成人になっていく。喜ぶことも、悲しむことも、悩み傷つくこともあるだろう。
その時に、一人の人間として私にできることがあったら、応援をしたいと思う。電話でもいい、手紙でもいい。返事はすぐにする。
これは、何も「手紙をください」という意味ではない。君たちは、前進あるのみだ。後ろを振り返る必要はない。
ただ、ふとしたきっかけで小学校生活を思い出すことがあるかもしれない。その時に、また交流が持てることがあるかもしれないということだ。
「別れは悲しい」と誰かが言った。その通りである。
と同時に、「別れはまた美しい」とも思う。その意味で、今日は君たちが一番美しい日だ。いつまでも記憶にとどめておいてほしいと思う。
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