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2016.05.28

アメリカ研修記9

【ホームページ移行のためのリバイバル掲載です】

オレゴン州の教育事情(1993年のもの)

1 アメリカ合衆国の教育

  アメリカ合衆国の教育制度は州ごとによって異なる。我々が訪れたオレゴン州の教育制度が、そのまま他の州にあてはまるわけではない。そこで、オレゴン州の教育事情を述べる前に、アメリカ合衆国全体の教育について記す。

 アメリカ合衆国では、教育は州の責任事項とされ、各州がそれぞれ独自の教育制度をとっている。また、州は、教育に関する権限のうち、かなりの部分を地方に委託している。具体的に、初等・中等学校をどのように編成するかといった場合、多くは、地方教育行政機関(学区、school districts)が決定してきた。だから、地域により、様々な形の初等学校、中等学校が作られているわけである。
 義務教育に関する規定も州によって異なっており、オレゴン州は6~18歳までが義務教育であった。

 公立初等・中等学校の教育課程の作成は、州および地方の責任事項であり、連邦政府の教育省は関与しない。教育省の教育に対する権限はさほど大きくなく、主な役割としては、各州の教育事情の調査・研究そして教育についての提言などに限られている。
 州は、州の教育法などにより、公立学校で教えるべき教科等について大まかな規定を設けている。地方学区は、その規定に基づいて、学区内の公立学校で教える標準的な教育課程を作成する。各学校は、それらの指針に基づいて、教育課程を編成をするわけである。

 教育財政制度に目を向けると、公立初等・中等学校の教育費のほぼ全額が公費で負担されている。公費は、連邦、州および地方学区の三者で構成されている。以前は、地方学区が教育費の主たる負担者であったが、最近は州の負担率が学区のそれを上回るようになった。また、連邦政府の支出が減少傾向にあるため、州の負担額は増加し続けている。
 さらに、地方の教育財政は、住民の財産税に大きく依存している。そのため、児童・生徒一人あたりの教育費は州によって大きな格差がある。
 そのために、安定した財源の確保および格差是正のための財政制度の確立が急がれている。

 このようにアメリカ合衆国の教育制度は、地方分権的な特徴を備えており、その特質は、国土が広大で国民の構成や文化が複合的な状況に適合するものとして受け入れられてきた。そのため、他の先進諸国と比べると、極めて多様性と柔軟性に富むという特徴を持っている。このことは、我々24人のレポートを見てもわかることであろう。
 また、常に変革を指向していることも大きな特徴である。特に近年は、国民の意識の高まり、移民の増加、社会の価値観の多様化、国際競争力との関連等の要因が教育改革の方向にも反映されている。

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