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2016.05.23

アメリカ研修記8

【旧HP移行のためのリバイバル掲載です】

★ 質素

 「豪邸」に住んでいるアンであるが、その生活ぶりはきわめて質素である。
 まず食べ物は絶対に残さない。
 彼女は私の母親と同じくらいの年齢である。私の母も食べ物は絶対に残さなかった。食べ盛りの時に戦中・戦後でちょうど食糧難だったことが影響しているのであろう。

 それに対してアンはおそらく食糧難を経験してはいないだろう。
 それでも食べ物に厳しい。いつだったか、チキンの丸焼きを食べたことがあった。そうしたら、骨が見えるところまで肉を一つも残さず食べるのである。それから、スープなどが残っていてもまず捨てることはない。いくら少量でも、冷蔵庫に入れて、また飲むのである。
 外食はまずしない。
 私がホームスティー中は一度も行かなかった。必ず自分で作った。時には、2日分の食事を作っておいて、2日連続で食べることもあった。ただ、苦手な食事の時は私にとって、地獄の責め苦のようなものだったが・・・。
 お菓子にしても同様で、ワッフルやクレープなど自分で作って食べていた。

 食べ物だけではない。
 とにかく一緒に買い物に行った時には、安くていい物をさがしていた。ドッグフードにしても、ベッドのマットレスにしても、自分のセーターにしてもである。
 彼女と一緒にして、「ムダだなあ」と思ったことは一度もなかった。
 電気にしても必要な分しかつけない。
 天気のよい日にはバスを使わずに学校に歩いていく。
 お金のかかる趣味を持っているわけではない。ちなみに、趣味はウオ―キング、テニス、スイミングである。テニスとスイミングは週に1回ずつクラブに行っているが、かかる費用は合わせて5000円ほどである。

 ただ、彼女はケチというわけでもない。
 立派な服はたくさん持っているし、ソファーやテーブルなどの家具類は、かたくて丈夫で、しかも見た目もいい。
 つまり、ずっと長く使うものにはお金を惜しみなく注いで、安くあげれるものは安く済ますという精神のようである。これは実に合理的である。
 彼女の暮らしぶりを見て、我が暮らしぶりを考える。実にムダが多い。貯金もなかなかできないわけである。
 ライフスタイルを少し考えなければ・・・・。

★ あいさつ

 日本とアメリカの文化の違いを特に感じるのはあいさつの時である。
 アメリカでは、まず初対面の時に握手をすることが多い。「ナイス・ミート・ユー」と言って。「はじめまして」というのは、「ハウ・ドゥ・ユ・ドゥ」と中学校以来思っていたが、あまり使わないようである。
 その握手の時に、必ず相手の目を見ていること。目を見ていないと、逆に失礼にあたるそうである。
 というわけで、アメリカにいる間、たくさんの人と握手をすることになった。

 それから知らない者どうしでも街角ですれ違う時には、「ハイ!」と声を掛け合う。
 すべてのアメリカ人がそうするというわけではなく、歩いていて目と目が合った時に、自然に「ハイ!」という言葉が出てくる人が多いようである。
 はじめは、一方的に声をかけられる方だったが、ホームステイーをして2週間もするとこちらから自然に声が出るようになった。

 こう考えると、アメリカ人のあいさつは我々日本人よりは接触度が高い。
 ただ、私にはアメリカ式の「だきつく」「ほっぺたにキスをする」というあいさつは見ていてとてもなじめなかった。幸いなことに、私はそのどちらもされることはなかったが、アンが同僚の男の先生を家に招いてさよならをする時に、その先生のほっぺたにキスをする時には、思わず目をそむけてしまった。
 恥ずかしかったからではない。生理的に受け付けなかったのである。
 日本式のあいさつが一番と考えた。
 やはり私は日本人なのである。

★ ホームパーティー

 ホームステイ―中に、アンの息子のスティーブンのバースディーパーティーがあった。
 スティーブンは誕生日を迎えると23才。オレゴン大学で英文学の勉強をしている。背がとても高く(190cm)、いつもニコニコしている好青年である。
 オレゴン大学は、アンの住んでいるポートランド市から160km離れたユージーン市にあり、姉のベッツィと一緒に住んで、大学に通っている。

 さて、バーティーの日。この日は、すでに結婚してサンフランシスコに住んでいる長女のジェニファーもかけつけてきた。聞くと、全部で12人集まるという。
 ほとんどが初対面の人で、しかも英語、英語の嵐なので少し気が重かったが、アメリカ人の若者たちのパーティーを見るのも悪くないだろうと気を取り直して参加した。

 パーティーの開始時刻は7時。その10分前からポツポツと人が集まり始めている。でも、アンは全然料理を作り始めない。テーブルの上には、グラスと皿をきれいに並べたのにである。
 集まった人は、皆リビングに行って話をしている。
 各自ビールやら、ジンやら、ワインなどをそれぞれ飲んでいる。食べるものはクラッカーだけ。私のほかにも、初対面の人どうしがいるみたいで、ホッとする。日本のことについて、いろいろと聞かれるので、答えているうちに1時間半がすぎてしまった。

 みんなが席についたのは8時半。それから料理とワインが出てくる。といっても、豪華な料理というわけではない。2種類のパスタとサラダだけである。なるほど、これならば7時になっても準備する必要はないわけである。
 すぐにみんな食べ終わるのかと思ったら、なかなか食べ終わらない。量が多いからではない。みな、会話を楽しんでいるのだ。本当によくしゃべる。

 だいたい食べ終わったところで、ケーキに23本のローソクが立てられる。そして、型通りの「ハッピーバースディー」の歌と共にスティーブンがローソクを吹き消す。
 あとは、そのケーキを食べるのだが、これまたなかなか食べ終わらない。なぜか。そう、例によって会話を楽しんでいるからである。

 気がつくと、みなカードをスティーブンに渡している。私は、ミニだるまをプレゼントした。「あなたが幸せになった時に、片方の目を入れてください」というメッセージを添えて。

 結局、パーティーが終わったのは11時半。4時間半もあの料理とケーキだけで楽しんだわけである。
 つまり、こちらのパーティーは、料理よりも会話や雰囲気を楽しむのが第一なのだ。我々がバースディーパーティーを聞いて連想するのは、豪華な食事とプレゼントであろう。ところが、彼らにはそのどちらもない。
 実に質素であり、そして気軽である。

 いつだったかアンにスクールカウンセラーのホームパーティーがあるから、そこで夕食をとろうと言われて、行ったことがあった。
 集まった人は約20人。各自が一品ずつ料理を持ってくる。ある人はピザを用意し、ある人はサラダ。また、別の人はコーヒーやケーキを用意するといった具合。あとは、各自が好みに合わせて選び、会話を楽しむわけである。
 なるほど、これなら手軽である。

 会合というと、すぐにどこかのお店の予約を連想するけど、時にはこのような会を開くのもいいものだ。もっとも、そのためには、かなり広いリビングが必要だけど・・・。

★ 散歩

 このホームステイ中に覚えた楽しみの一つに散歩があった。
 ポートランドでは、10月でも晴れの日が多く、雨が降った日は5~6日ぐらいしかなかった。曇りの日も少なく、雨が降らない日はだいたいが晴れだった。
 特に土日は5回あったが、すべて晴れだった。この休日に、散歩するのが何よりの楽しみになった。

 何が楽しいのか。周囲の風景を見るだけで楽しいのである。
 まず、一つ一つの家が美しい。そして、実に個性的である。形もそうであるが、壁の色もそうである。
 しかも家を飾りつける小物にもこっている。これは、私自身が自宅を新築したばかりであったから、興味があった。

 そして、それらの家を引き立たせてくれるのがポートランドにはあった。
 庭と木々である。どの家も必ずといっていいほど、庭を持っていた。鮮やかな緑色の芝生である。
 庭があるのとないのでは、家の雰囲気も変わってくる。庭があると、そこには当然木々と花々が植えられることになる。それがまた、家と調和されるのである。

 こんな美しいところを、しかも快晴の中できれいな空気を吸うことができる。・・・こちらの人々が散歩好きになるのも当然だ・・・そう思った。
 事実休みの日になると、ウォ―カーがどっと増える。しかも見知らぬどうしでも、目と目が合うと、「ハイ!」とあいさつする。心と心が通い合うわけである。
 サンキュー、グッドウォーキング!

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