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2016.06.04

アメリカ研修記11

【ホームページ移行のためのリバイバル掲載です】

私の見たアメリカの教育  -アインソワーズ小学校に学ぶー
(1993年の海外視察研修の報告書より)

1 TEACHER

Talented       (才能ある)
Efficient       (技量ある)
Accomplished   (熟達した)
Creative       (創造的な)
Helpful        (有用な)
Effective       (効果的な)
Respected      (尊敬された)

 上の表は、私が研修を行ったアインソワーズ小学校のある先生のTシャツにプリントされていたものである。この言葉通り、アインソワーズの教師たちはすばらしかった。
 授業では技量のあるところを見せ、創造的な教育を示してくれた。そして、教師たちは子供たちに信頼され、尊敬されていた。私が学んだことは数多い。
 このアインソワーズ小学校は、ポートランド市のダウンタウンから車で10分ほどの南西部に位置している。児童数は450名、教職員数は46名で、幼稚園から5年生までの児童が在籍している。児童の家庭は比較的裕福であり、保護者の教育への関心も高い。また、市内で唯一のスペイン語のクラスがあり、それがこの小学校の特色の一つにもなっている。
 ここでは、アインソワーズ小学校の特色、そして、そこから私が学んだことを中心に述べていきたい。

2 アインソワーズ小学校の特色

(1) 教師たちの意欲的な仕事ぶり
 教師たちの仕事ぶりは意欲的である。勤務時間はご前8時から午後4時までであるが、ほとんどの教師たちは7時30分ごろまでには教室に入り、授業の準備をしている。始業が8時45分であるから、1時間以上もその日の準備に費やすわけである。午後も5時ごろまで残る教師が多い。
 自分なりの授業をするために、納得がいくまで教材研究をするーそのように私には思われた。
 それに何も学校のある日ばかりではない。5年生担任のマーチン先生は、土・日も教材研究に費やすという。そのほかにも、夏のバカンスの時には、新しく担当する学年の単元の構想をねり、進んで講習会に参加するという。また、理科の実験道具を豊富に持っているので聞いてみると、半分以上は自費で購入したとのことである。「それが自分の人生を豊かにするからです」と彼女は言った。このような教育に対する積極的な姿勢は、私にとって刺激的であった。

(2) 弾力的な時間割
 アインソワーズ小学校における時間割は、各学級によって大幅に異なる。それぞれの教科の時間の取りかたも、各担任の裁量に任せられている。ただし、体育・音楽・図書館の授業は専科の教師が行うので、時間が固定化している。
 教師自身が学習時間を決めるので、子供たちの学習活動に応じた弾力的な授業運営が可能となる。たとえば、午後に2時間算数と理科の授業がある場合、「今日は理科の実験を長くしたいから、算数は20分、残りは理科をしよう」ということができるわけである。ちなみに、休み時間のとり方も担任に一任されているので、学習活動が途切れるということはない。

(3) スペシャリストの存在
 この小学校には、日本の小学校にはないスペシャリストが存在していた。スクールカウンセラー、E・R・Cの教師、D・A・R・Eの警察官等である。スクールカウンセラーは、カウンセリングを通して子供たちの心の悩みを解決しようとしていた。また、E・R・C(Educational  ResourceCenter)の教師は、読み・書き・算数等の学力が低い子供達に対して個別的な指導を行っていた。
 私が一番興味を持ったのは、D・A・R・E(Drug Abuse Resistence Education)である。これは、アメリカの社会問題になっている麻薬使用を防ぐために、市が小学校段階から教育しようとするものである。市の教育計画に沿ったテキストがあり、警察官が直接授業をする。その授業も、ロールプレーイングを取り入れた実践的なものである。無いようは麻薬だけに限らず、飲酒や誘拐の防止なども含まれている。アメリカの国情を表した教育ということが言える。

(4) 市内で唯一のスペイン語の授業
 先に述べたように、アインソワーズ小学校では、スペイン語の授業が行われている。といっても、各学年2クラスずつである。特別の授業であるため、スペイン語の教師にはヘルパーが一人ずつついている。
 私が驚いたのは、高学年ともなるとスペイン語そのものの授業はわずかで、スペイン語を使って算数・理科・図工などを学習をしている点である。教師はスペイン語を使って授業を進め、子供たちもスペイン語で答える。スペイン語を理解するだけでなく、実際に表現できるところまで高めるという語学教育だと感じた。

(5) 親の積極的援助 -ビジター・ボランティア制度ー
 小学校には日常的に親たちが出入りしていた。参観のためではない。学校教育の援助をするためである。彼らのことをビジター、あるいはボランテイアと称していた。
 たとえば5年生の社会科で小麦粉で立体的なアメリカ合衆国の地図を作る学習。小麦粉と水を混ぜて、ほどよい固さはしなければいけない。親が二人来てその作業の援助をする。子供たちは、製作に専念できるというわけである。また、作業の手伝いだけではなく、時には自分の得意分野で子供たちに授業をすることもある。2年生では、建築物に詳しい親が、模型や写真などを活用して、家の立体的な書き方を説明していた。子供達も、何も抵抗を感じることなく自然に話を聞いている。
 派は親だけではなく、多くの父親もビジターとしてきているので、「彼らは仕事を休んで来るのですか」と聞くと幼稚園の先生は、「そうです。彼らは、学校で何かトラブルがあるより、1時間仕事を休んで学校に来る方がベターだと考えているのです。」と答えた。親たちの教育への関心の高さを示す話である。
 このビジター・ボランテイア制度の利点は次のようなものであろう。

 ■子供たちの学習が効率的に行われる。
 ■親が、我が子の授業での様子を気軽に見ることができる
 ■親は我が子の友達を知り、子ども達も友達の親を知ることができる

 特に3番目のメリットが大きい。幼稚園で、父親がコンピュータの学習の時、どの子たちにもやさしく励ましながら教えているのが印象的だった。

(付記)1993年のときには、「日本の普通の小学校がこんなふうになるのは、いつのことだろう」と思っていたが、それから10年もしないうちに当たり前の風景となったものもある。(ゲストテイーチャー) これからも日本の小学校はどんどん変わっていくことであろう。

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