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2016.06.05

アメリカ研修記12

【ホームページ移行のためのリバイバル掲載です】

3 個性的な社会科授業

 私自身の今回の研修の目的の一つに、「アメリカの社会科教育は、どのように行われているか」ということがあった。ここでは、二つの社会科の授業例を紹介する。

(1) 具体的な作業学習を通して地形的な特徴をつかむ

 5年生の社会科。アメリカ合衆国の地形についての学習である。
 通常の授業であれば、印刷した白地図に山脈の名前を書き込んだり、どこに平野が広がっているか考えたりといったような、いわば頭の中での作業が多いであろう。ところが、私が見た授業は具体的な作業を通して地図作りであった。
 作り方は次の通りである。

① 各自、4つ切り画用紙より少し大きめの板やダンボール箱を用意する。教師はそれにアメリカ合衆国の大まかな地図を書く。
② 各自が持ってきた小麦粉を水にとかし粘土のようなものを作る。子供たちは、地図帳を見て山脈・川・平野を意識しながら立体的に小麦粉をつけていく。
③ 小麦粉が固まったら、その白地図にペイントしていく。平野の部分は緑、川は青、山脈は茶色というようにである。隣国のカナダ・メキシコには別の色をぬって、自分だけのアメリカ合衆国の立体地図の完成である。

 このような具体的な作業の過程で、子供たちは「この山脈は〇州と〇州にまたがっている」というようなことを自分で発見する。教師から与えられた知識と違って、そのようにして得た知識は、次の地理的な学習に応用されていくものであろう。

(2) 子供たちの追究意欲を喚起し、単元の学習中その意欲を持続させる

 4~5年のクラスの社会科。世界各国のことについて、一人が一国ずつ調べるという学習である。
 この学習は1ヶ月半にわたる長期的なものである。私が見たのは単元の最後の部分である。子供達が今まで学習したことをもとにして、自分と等身大の紙の人形を作るというものである。その人形は、その国を表す衣装や動作を取り入れる。どの子も自分が調べたノートをもとにして、人形作りに取り組んでいた。
 この単元の大まかな流れは、次の通りである。

① 自分の名前や家にある物、家族の趣味などから、自分の調べる国を決める。
② その国の本を図書館で探し、自分なりに調べる。
③ 学級で話し合いをして、自分たちでまとめる視点を方向づける。
④ 各自、その方向づけに沿って、ミニレポートにまとめる。
⑤ 学習のまとめとして、等身大人形にその国を表現する。

 私が感心したのは、どの子も意欲的に学習活動をしている点である。ノートを見ても、自分が家族から聞き取り調査をしたこと、本で調べたことがぎっしりと書かれていた。
 1ヶ月半に及ぶ学習で、なぜこんなに意欲が持続するのだろうか。次の二つの理由が考えられる。
 一つは、単元の導入に、身近な存在である家族を対象としているからということである。身近なものであれば、興味が増し、聞き取り調査もしやすい。家族も進んで外国に行った時の写真や資料を出してくれたという。
 もう一つは、教師が4枚にわたる単元の学習の手引きを出しているからである。その手引きには、この単元でどんな学習をどのような方法でするかが書かれている。しかも、何月何日まで聞き取り調査をするように期日が明示されている。だから、子供達は見通しを持って、自力で学習することが可能となるのである。もちろん、このような手引きを作るためには、しっかりとした単元構想が教師に必要である。改めて教材研究の重要性を自覚した
次第である。

4  まとめ  ~私が学んだこと~

 最後に、私がアインソワーズ小学校から学び、今後に生かしていきたいことを記す。

(1) 自分の授業をもっと創造的に
 社会科の授業例でもわかるように、アインソワーズ小学校では、一人一人の授業が個性的・創造的であった。先の例の他にも、2年生では月ごとに一つのテーマを決めて総合学習を行っていた。たとえば、10月にはハローウィーンがあるので、それについてアウトドア学習もするし、絵や工作もするし、日誌作りもするという具合である。このような授業は、教師自身の深い教材研究と旺盛なチャレンジ精神があって可能となるのだろう。その姿勢に学びたい。

(2) 子供たちにもっと励ましを
 アメリカの教師と子供との関係はドライだろうと予想をしていた。ところが、実際にはそうではなかった。朝、教室に入ってくる子一人一人に声をかける先生。子供の質問に納得いくまで答える先生。ちょっとした注意を促す場面はたびたびあったが、怒る場面は一度も見ることはなかった。
 逆に、どのクラスも人数が20~24人ということで、教師が一人一人の子を深く見つめ、励ましているように思われた。生徒指導面な面でも学ぶことが大きかったわけである。

(3) 研修を続けることの大切さ
 研修を続け、自己を高めていくことは、教師である限り不可欠なことである。アインソワーズ小学校の教師たちは常に研修を続けていた。長期のバカンスといえども、新学年の教材研究のためにかなりの時間をさいている。
 私の研修中に、州の教育関係者が学校に来て、州の目指す教育の在り方を説明した時があった。その時に、教師たちから質問や意見が続々と出されるのを見て、感心したものである。学びつづけることがいかに大切か痛感させられた。

 この2ヶ月間の研修は、私にとってかけがえのないものとなった。この体験を、今後の教育現場に還元するように努力していきたい。この研修にご尽力いただいた関係諸機関をはじめ、ホストファミリー、アインソワーズ小学校の皆さんに、心から感謝したい。

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