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2016.06.26

私の教材開発物語第11回・第12回

【ホームページ移行のためのリバイバル掲載です】

連載 私の教材開発物語 第11回

   「人」で、地域のよさ・日本のよさを伝える

                       
■ 「人」を登場させる価値

 私のホームページのメインテーマは「地域のよさ・日本のよさを伝える授業」である。
 子供たちが将来巣立つ。大都会へ行く者もいるであろう。海外へ行く者もいるであろう。その時に、自分の育った地域のよさや自国のよさについて堂々と語ることができる・・・そんな子供を育てたいと思っている。
 そのような願いから、ホームページのメインテーマを設定した。

 そのテーマの実践で心がけていることがある。それは、可能な限り具体的な「人」が登場する実践をすることである。
 人が登場する効果は大きい。何よりもインパクトが強い。子供たちがひき付けられる。人に関わる物語は、常に具体的である。さらに、「自分もこのような人になりたい」と思う子が必ずといっていいほど出てくる。人を取り上げるからこそ生まれる共感である。
 それらの人から、先に述べた地域のよさ・日本のよさを感じ取ってくれればなおよいと思っている。

■ 陥りやすい罠

 しかしながら、人を取り上げる場合に陥りやすい罠がある。
 「教師の思い入れが深すぎて、子供の学習と離れた一方的な教え込みになってしまう」ということである。
 自分が見つけた教材、そして人。調べれば調べるほど共感をする。この感動を子供たちにも伝えたい。しかし、伝えたいことを次々と子供たちに投げかけるものの、教師ほどは共感している様子がない・・・このパターンがそうである。私は何度もこの罠に陥った。
 自分の伝えたいことをストレートに投げかけることのみであれば、確かに一方的である。やはり、その人から子供たちが学ぶ授業の組み立てが必要である。

■ 授業「UNTAC(アンタック)が救ったカンボジア (国連の働き)」(小6・社会)

 6年生の国際連合の学習の一つとして、誰か人物を取り上げたいと考えた。真っ先に浮かんだのが、明石康氏である。
 現代史において、日本人が世界の中でリーダーシップをとって活躍をするということは数多くはない。その中で、1993年にカンボジアの正常化を果たした明石康氏をはじめとするUNTACの人々の働きは記憶に新しい。
 さっそく資料探し。「平和のかけ橋」(明石康著・講談社)という児童用図書とインターネットの資料で授業を構成する。授業の概略を示す。

★発問1 (地雷撤去の写真を示し)この人たちは何をしているのでしょう。
     ・地雷についての説明
★発問2 (写真を示し)この人は、明石康さんといいます。このカンボジアで大きな仕事をした人です。どんな仕事をした人だと思いますか。
     ・カンボジアの内戦の説明
★発問3 どんな解決策が考えられますか。
★発問4 この中で理想的な解決方法と思われるのはどれですか。
     ・国連がUNTACという組織を作ったこと、その活動の様子の資料を提示(明石氏はUNTAC代表だった。)
★発問5 UNTACの活動を見て、どんなことを思いましたか。
★発問6 カンボジアの人はどう思ったと思いますか。
★発問7 明石さんたちは、立て直しの選挙に向けて努力を続けていました。しかし、その直前に日本人が殺されてしまうという悲劇がありました。その時に明石さんは選挙をやりとおそうと思ったでしょうか。それともやめようと思ったでしょうか。
    ・明石氏は選挙をやり通し、新しい政府ができたことを説明。
★発問8 明石さんたちはどんな仕事をしたと言えるでしょうか。

 明石氏が「国連のUNTAC代表」という紹介をした時、子供たちから「オー」という声が自然に出てきた。人物を登場させるインパクトを感じた。
 発問8では、「新しいカンボジアを作った人」「平和を求めて働いた人」「一から国を作るような仕事」といった反応が出てきた。
 最後の授業の感想でも、「明石さんたちは、カンボジアに夢を与えた人だと思った。」「こういうすばらしい仕事があるんだと思いました。」といった共感が続いた。
 この授業の組み立てで留意したことは、次の通りである。
・その人を通して見える事実について考えさせる。
・その人の立場に立った発問を組み入れる。
・その人が行った仕事の価値づけを行う。

■ インターネットの出現で探しやすくなった

 インターネットの出現で、自分が未知の分野の人を探しやすくなった。
農業分野で国際貢献をした事例について授業をする機会があった。具体的にそのような日本人がいたら、なおよい。私が教師になった十数年前であれば図書館等で膨大な資料を当たって、そこからキーマンを探すところである。今は、インターネットで該当する人物が出てくることが多い。
 この時には今から30年前にフィリピンに一家で渡った古川外男氏の例を見つけることができた。今度は「古川外男」氏をキーワードに検索をする。古川氏の一生、彼を支えた団体、そして彼の意志を引き継いで行っている古川外男記念日本語学校(フィジー)の存在を知ることができた。
 自分に必要な資料がこのようにしてインターネットで集められる。
「人」を登場させる授業を行うには、現在はいい時代である。(むろん、その資料の価値は吟味する必要があるが。)

■グローバル化した世界だからこそ

 多くの先達の努力があってこそ、今の日本、今の地域がある。
 どの地域にも、今の子供たちに伝えたい先人がいる。
 また現在も、よりよい日本・よりよい地域を創るために努力している人々がいる。
 数多くの人々のその気概とその心。
 グローバル化の世界だからこそ、私達の先達の気概やよさを学び、誇りを子供たちが持ってくれればと願う。

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連載 私の教材開発物語 第12回

   新たな教材開発、学習ゲーム 
      

■ 「思考力を鍛える学習ゲーム」という提案

 昨年、7人のチームで一つのプロジェクトに取り組んだ。
 テーマは、「思考力を鍛える社会科学習ゲーム」である。

 社会科における学習ゲームは珍しいものではない。地名探し、地名しりとり、ビンゴゲーム等、いろいろと私も行ってきた。ただ、それらはあくまでも、授業の中ではおまけみたいものであった。導入で授業を盛り上げるため行ったり、暗記を効率的に行うために行ったりという具合であった。

 この「思考力を鍛える社会科学習ゲーム」は、そのような学習ゲームとはコンセプトが違う。
 メインは「思考力を鍛える」という点である。当然、授業のおまけではない。授業の中核に学習ゲームが位置づけられる。1時間を貫くものである。
 そして、このコンセプトは、1冊の本になった。
 「思考力を鍛える小学校社会科学習ゲーム」(上條晴夫・阿部隆幸編著 学事出版)という本である。

■ 学習ゲーム「ターミナルベース地を探せ!」

 この本で、私は4つの学習ゲームを担当した。
 何ごともそうであるが、新しいものを生み出すにはそれ相応の苦労が伴う。しかも、今回は新しい学習ゲームの提案である。教材開発が好きな私といえども、胸中は不安の方が大きかった。
 対象は5年生社会。ある程度、学習ゲームに関わる先行文献を読み、応用が可能かどうか考える。
 しかし、なかなかいい案が出てこない。

 案は考えつかないものの、「まずは地図を使った学習ゲームを創り出そう」ということは決めていた。私自身が地図を見ることが大好きで、謎解きのような面白さを地図帳に感じていたからだ。

 ある日、地図帳を見ていて、ふと2学期に行う運輸の学習で閃いたことがあった。
 宅急便のターミナルベース地のことである。岩手県は、宅急便のターミナルベース地が北上市にある。県庁所在地の盛岡市ではない。
 昨年、担任した子供たち(やはり5年生)のほとんどは、盛岡市にあると思い込んでいた。「北上は、秋田に高速道路が延びている。(盛岡は秋田には高速道路が走っていない)」「北上は花巻空港に盛岡に近い。」「渋滞が少ない」といったことを、昨年の子供たちは考え出していた。
 
 「各都道府県のターミナルベース地の立地条件を考えさせると面白いのではないか。」
 そう考えたのである。
 さっそく、ヤマト運輸のホームページで各都道府県のターミナルベース地を調べる。
すると、岩手県の例と同じように、子供たちに考えさせるような例がいくつか浮かび上がってきた。
 たとえば・・・
・福島県→やはり県庁所在地ではなく、郡山市にある。
・神奈川県→3つある。ベース地の数は人口に比例する。
・鳥取県→ベース地がない。岡山県の津山市のベース地がカバー。
・北海道→5つ全てが空港の近く。(これらのデータは2001年現在)

 「これらをクイズ形式に出して、その理由を考えさせることにより、『ターミナルベース地の立地条件』という社会的事象を追究できる!」
 そう考えた。
 ゲームのおおもとができれば、あとは細かな部分を考えるだけである。都道府県の順番、ワークシートの用意、説明の仕方の工夫。そしてゲーム自体がシンプルであればなおよい。

 最終的には次のような形にした。
1 教師が出した都道府県のターミナルベース地を地図帳で探す。
2 一つ当てるごとに1点を獲得する。
3 一問を終えるごとに、そのベース地設置の理由を考えていく。
4 全部で5問行い、合計得点を競い、数多く当たった子供の勝ち。

 実際に授業で行った時には大いに盛り上がった。その設置理由も地図帳をじっと見ながら子供たちは考えていた。「思考力を鍛える」という点でも合格であった。

■ プロジェクト・メーリングリスト

 この学習ゲームの教材開発が出来たのは、チームによるプロジェクト・メーリングリストのおかげである。7人のメンバーのみのメーリングリストである。
・初期の段階では、各自の文献による情報交換。
・アイデアの磨き合い。
・実践原稿のチェック・・・等
 全国各地にいるメンバーがこれらの活動をメーリングリスト上で行う。
 それまで、数人が執筆する本といえば、各自が書いた原稿を編著者が集めてチェックして終わりというものばかりであった。
 ところが、今回は本当にプロジェクトチームという形で、多くのことを学んだ。1冊の本を生み出すことと共に自分がネットサークルで学ばせていただいたという感じである。

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