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2016.07.16

私の教材開発物語第21回・22回

【ホームページ移行のためのリバイバル掲載です】

連載 私の教材開発物語 第21回(2002年)

「わたしたちのテレビ白書」

■ 教科の中でメディアリテラシー学習ができないか

 私の実践の柱の一つにメディアリテラシー学習がある。
 2年前、前任校で「発見!プロ野球を楽しく見る方法」に取り組んだのがきっかけであった。学年1クラスいうこともあり、したいテーマを見つけてわりと自由に実践をしてきた。
 ところが、今年転勤となった今の小学校は学年4クラス。総合的な学習は合同が原則。その内容も年間計画に定められている。転勤したてということもあり、自由に「メディアリテラシー学習を」というわけにはいかない。
 しかし、何も総合的な学習だけがメディアリテラシー学習の対象ではない。教科の学習の中でも、何らかの形でメディアリテラシー学習はできるはずである。たとえば5年生社会の通信に関わる学習では、具体的に放送局を見学したり、自分たちで番組作りをしたりすることにより、メディアリテラシーの視点を深めることができる。
 その視点で担任している4年生の各教科の学習内容を見てみる。
 国語の教科書(光村図書)の中に「生活を見つめて」という単元がある。調べたことを報告する学習である。教科書の例は「読書生活」である。「これを『テレビ生活』に置き換えたらどうだろう?」というメディアリテラシー学習のヒ
ントが浮かんだ。
 教科のねらいを達成しつつ、対象をテレビにすることによりテレビというメディアに対する見方を深めることも同時にできると考えたのである。「調べたことを報告する」のであるから、テーマも「わたしたちのテレビ白書」と設定
をした。

■ 実践「わたしたちのテレビ白書」(小学校4年生)

 単元の大まかな流れは、次の通りである。(合計8時間)

1 テーマ決め・アンケート用紙作成(1時間)
2 アンケート実施(1時間)
3 アンケート用紙集計・分析(2時間)
4 報告文作成(2時間)
5 発表・振り返り(2時間)

 ポイントは具体的にテレビについて何を調べるのかという点である。最初の時間。子どもたちに「テレビについてだったら何でもいいです。君たちが疑問に思っていること、調べてみたいことを決めなさい。」と投げかけた。
 子ども達が次のようなものをテーマとして選んだ。

・4年1組のみんなが好きなCM
・好きなキャラクターとタレント
・テレビのことで家の人に言われること
・テレビのいい点・悪い点
・家にはテレビが何台あるか
・好きなテレビゲーム
・家の中で誰がテレビのチャンネルの中心か
・好きなテレビ番組

 「好きな〇〇」が多いであろうと予想をしていたら、意外と幅広いテーマとなったと感じた。たとえば、「テレビのことで家の人に言われること」や「テレビのいい点・悪い点」などはおもしろい内容である。きっと子どもたちが自分のテレビ生活を考えるきっかけになるだろうと感じた。
 一つのテーマについては希望したものを4~5人が担当をする。アンケートを作成し、書いてもらい回収をする。集めたアンケートを読みながら「あっ、そうか」「予想と全然違う」と楽しそうに取り組んでいた。時にはアンケート
を書いてもらった人に聞き取りも行った。
 そして集計、分析をして教科書の例を参考にしながら報告文にまとめていった。

■ 子どもたちのテレビ生活が見える白書に

 それぞれのグループの報告は子どもたちにとっても私にとっても興味深いものが多かった。
 たとえば、「家にはテレビが何台あるか」。学級34人のうち一台と答えた子は5人のみ。2台・3台が一番多かったが、4台以上が10人もいた。「一台で不便ではないのですか?」と調べた子どもたちが聞いたら、「家族がだん
らんできる」「番組のうばいあいもあるけど、一つの番組についていろいろと話ができるからいい」ということであった。一台と答えた子どもたちは不便よりもメリットの方を感じているわけである。
 また、「テレビのよい点・悪い点」を調べたグループの「いい点ベスト3」は、「いろいろな情報が入る」「楽しめる・おもしろい」「分からないことが分かる」であった。大人からすれば当たり前のような結果であるが、子どもたちにとっては、「このようなことを初めて考えた」という感想もあり、「テレビとは何か」ということを子どもたちに意識させる結果となった。

■ 子どもたちが「わたしたちのテレビ白書」から感じたこと

 報告会後、子どもたちにこの単元で意図していた国語のねらいとは別に、「テレビについて思ったことは何ですか?」と聞いた。子どもたちのテレビに対する視点がどう深まったかをみるためである。
 子どもたちからは次のような感想が出てきた。

・テレビは,みんなにとって欠かせないというものだということが分かりました。お母さんが注意するのも分かるけど、ニュースを見ることもあるので、やはり大切です。それにつかれて家に帰ってきて、みんなで楽しくテレビを見ると、つかれもふっとぶ時間になると思いました。
・テレビはすごいものだと思いました。ニュース、アニメ、ドラマといろいろと見られます。わたしも調べてよかったし、みんなの発表もいろいろと比べられておもしろかったです。
・白書を自分たちで作るたびに「へえ~」と思ったり、発表を聞いて「すごいな~」と思ったりして、いろいろなことが分かり、とてもいい勉強になりました。
・テレビにはいいところも悪いところもあることがわかりました。このような細かい情報がえられてよかったです。
・テレビ一つでこんなにいろいろと発表ができるなんてびっくりしました。この先もテレビのことを研究したいと思いました。
・この白書の結果がわかって、みんながテレビを見ることが変わればいいなと思いました。

 身近であるがゆえに、なかなかその存在について考えることがなかったテレビ。今回の「わたしたちのテレビ白書」でじっくりとテレビについて考え、視点を深めることができた。このために何も特別に単元を行ったわけではない。一つの教科の中で工夫をすれば、その教科のねらいを達成させるだけではなくメディアリテラシーの視点も深めることができるのである。
 この冬休み(岩手は長い)には改めて教科の学習内容を洗い出し、教科の中でできるメディアリテラシー学習を体系化しようと考えている。

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連載 私の教材開発物語 第22回

            「学習ゲームの魅力、再発見」
  
■ 「学習ゲーム」の講座を持つことに

 岩手は冬休みが長い。私の小学校は来週20日が始業式である。
 冬休み期間中に県内ではいろいろな研修が行われる。その一つ、「県学校レクリエーション指導者養成講習会」で講座の講師をすることになった。今まで全く関わりのない県学校レクリエーション協会からの依頼である。昨年度発行した本「思考力を鍛える小学校社会科学習ゲーム」(上條晴夫・阿部隆幸編著学事出版)が縁らしい。(この本作りのコンセプトは、本メールマガジン797号に執筆。授業でのおまけのような学習ゲームではなく、授業の中核に位置付けられる学習ゲームという点が既成の概念と異なる。)

 しかし、本年度転勤をしてからは学習ゲームになかなか取り組むことができなかった。その点で講師を受けることに迷いも少しはあったが、基本的に「頼まれた仕事は断らない」と決めているので、「よろしくお願いします」と返事をした。
 くわしく聞いてみると、「講座でレクリエーションの技術は 身につけられる。しかし、『レクリエーションはおもしろいが、肝心の授業はつまらない』と子どもたちに言われたのでは意味がない。そこで 授業づくりに関わりのあ
る『学習ゲーム』でお話をお願いしたい。」ということ。依頼の趣旨はわかった。

■ 文献研究、そして改めて学級で実践

 学習ゲームの講座を行うのは初めてである。そこで、改めて今まで自分が参考にした基本的な文献を読み直す。
 様々な文献の中で一番役立ったのは上條晴夫氏の『「勉強嫌い」をなくす学習ゲーム入門』(学事出版)である。この本の章立て自体が 学習ゲーム入門講座そのものと思われるくらいである。具体的には、「いま、なぜ『学習ゲーム』か」という問題提起あり、「学習ゲーム開発とその実践」という具体的な実践事例あり、そして「学習ゲームの授業運営法」という章で締めくくっている。「自分が講座を受け持つ」という視点で読み、改めてこの本の凄さを感じた。

 また、この本の中にあるゲームと今まで自分が開発したゲームを改めて学級で実践してみた。学級担任が講座を行うメリットは、やはり自分の学級に実践をかけることができる点である。そして、ゲーム終了後は子どもたちに5段階評価をしてもらった。おもしろいことに教師が「このゲームはなかなかいい」と思っていても子どもたちからは不評だったり、またその逆もあったりで「試してみることはやはり価値がある」と改めて感じた。

 文献研究と学級での実践から、講座ではやはり「学習ゲームの模擬授業」をメインにしようと考えた。実際に体験してみることが、学習ゲームの一番の理解につながると思ったからである。「導入ゲーム」「バラエティゲーム(笑いを引き出すゲーム)」「思考力を鍛えるゲーム」の3種類のゲームを柱にしてその前後に概論、運営法の話を行う計画にした。

■ いざ講座

 先の準備期間は1ヶ月ほど。いざ講座である。持ち時間は100分。レクリエーションの研修ということで、参加者は20代・30代の若い教師が中心である。しかもほとんどが希望しての参加なので、私の講座の前のレクでは大いに盛り上がっていた。
 これは自分にとって有難かった。聴衆が意欲的でしかもある程度リラックスしている。学習ゲームを行うには好都合の条件である。

 その影響もあってか、予想以上に模擬授業は好評であった。特に先の上條氏の著書の中に書かれている「他己紹介ゲーム」の模擬授業は、「ぜひ学級で実践してみたい」という声が続出した。
 このゲームは質問をしたことをもとに隣の人を紹介するものである。次のように行う。

1 二人一組になる。
2 質問者はたとえば次の質問からスタートする。「テレビは好きですか?」
 その後は答えの理由を深く聞いていく。
3 質問時間は二分。
4 質問内容を材料に、ある型に沿って 「他己紹介スピーチ(一分)」を行う。

 スピーチの型の紹介やいくつかの留意点を加えていざ質問開始。見知らぬ同士でも「質問」という形であれば、どんどん話が進んでいく。身振り手振りを交えて自分のことを説明する回答者。それをうなずいたり、大笑いしたりしながら聞く質問者。真剣な学習であるが、なぜか和やかで大盛り上がり。代表者のスピーチにも「ほー!」「うまい!」という声が聴衆から自然に出てきた。
 このような学習ゲームを3種類5本行った。大笑いする場あり、真剣に考える場ありと私にとってはあっという間の100分であった。

■ 校内研でも講座を開く

 「県のレク協会の研修に講師で行くのなら、ぜひ校内でも・・・」と依頼をされ、冬休み中の校内研でも講座を開くこととなった。
 先の講座と違い平均年齢はやや高いし、希望をして校内研に参加をしているわけではないので、意欲面で心配をしていた。しかも、持ち時間は県レクの半分ということでかけ足の講座となる。しかし、それらの心配は無用であった。次のような感想がそのことを物語っている。

★今日紹介していただいた学習ゲームは心をほぐし、自然な形で自分をさらけだす(表現する)ことができるものだと感じました。学級づくりにたいへん有効だと思いました。
★「楽しい」ということはとても大切なことだと改めて分かりました。「学習ゲームで何かの力を育てる」ということは、目からウロコでした。
★やはり体験的な研修は実になるなあと思います。理論だけではなく、実際にやってみることで研修の充実度が変わってくることを実感できました。大人でもこんなに楽しいのですから、子どもならなおさらですよね。

 一人一人の感想を読むと、実にいろいろな学びがあることがわかった。授業での学習だけではなく、学級づくりにも役立つ。それだけではなく自分の内面を知ることもできる。さらに研修システムの一つとしても魅力的・・・。まさに学習ゲームの可能性の広さを感じた。

 今回は新たに教材開発を行ったわけではなかった。しかし、「学習ゲームの楽しさ」「学習ゲームの知的な魅力」を再度実感することができた。転勤をして学習ゲームの教材開発に遠ざかっていたが、改めて挑戦してみようと思っている。

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