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2016.09.03

【HP移行原稿】「よりよい生活人」を目指す新家庭科教育1

2001年2月の筑波大学附属小学校研修会家庭科部会での発表レポートである。

Ⅰ 新家庭科教育で目指す指導軸

1 子供たちにとって魅力的な教科、家庭科

 今年度、5年生22名の担任になった。
 出会い2日目のスピーチ。「家庭科の授業が楽しみ」と言った子が5人もいた。今まで文化祭での家庭科作品や家庭科室での調理実習の様子を見て、子供たちなりに感じていたのであろう。また、始業式の日に配布された教科書からも、家庭科という教科の楽しさが伺える。それらの要素があいまって、家庭科に期待するスピーチが出
てきたのであろう。
 「子供たちのこの期待に沿う授業をしなければ」と子供たちのスピーチから心したものである。

2 担任が家庭科の授業をするよさを生かす

 岩手県では小規模校が多いため、家庭科の授業は担任がそのまますることが多い。
大規模校は専科もいるが、それも学校ごとの裁量である。
 私自身は4度目の家庭科授業である。
 「専科の先生が家庭科授業を受け持つよさ」、「担任が家庭科授業を受け持つよさ」、それぞれあるだろう。たとえば、専科の先生が受け持つ場合、「より専門性が発揮できる」「教材研究がより深まる」ということが言える。また、担任が受け持つ場合には、「他教科との関連が持ちやすい」「一人一人のよさを深く見ることができる」といった点がメリットである。
 ここで大切なのは、「それぞれのよさを生かす家庭科授業を展開すること」だと思う。私自身、「家庭のよさを生かした授業」「懇談会、学級通信を通して家庭科授業の様子を積極的に伝える」といった点で、担任としてのよさを多いに生かしたつもりである。(これについては後ほど述べる。)

3 「よりよい生活人」を目指して

 現在は新学習指導要領の移行期間である。「時数減に対応した指導方法の改善」「総合的な学習との関連の明確化」といった課題解決も急務である。そのような今、必要なのは、一人一人の教師が持つ「指導軸」ではないだろうか。新学習指導要領のねらいに沿った自分なりの主張および実践である。
 小学校学習指導要領における家庭科の目標は、「衣食住などに関する実践的・体験的な活動を通して、家庭生活への関心を高めるとともに日常生活に必要な基礎的な知識と技能を身につけ、家族の一員としての生活を工夫しようとする実践的な態度を育てる」ということである。
 究極のねらいは、最後の文言の「生活を工夫しようとする実践的な態度」を養うことにあると考える。
 このねらいに即して、私は「よりよい生活人」という指導軸を設定している。「主体的な学習を通して、子供たちが質的に高まった生活を送るようにすること」が「よりよい生活人」の目指す点である。
 その過程で、家庭生活を高めようという意欲、生活に必要な基礎的技能、家族の一員としての自覚を高めることができる。そして、その実践的な活動が、子供たちの生きる力に直結するのである。

Ⅱ 「よりよい生活人」になるための提案

提案1 「発見」「広げよう」をキーワードに

1 そのよさ

 単元構成を考える時に、「発見」「広げよう」をキーワードにするようにした。
 そのよさは次の点である。

■「発見」をキーワードにするよさ
・「発見」することは、子どもたち自身が主体的に知識や技能を獲得することを意味する。必然的に、子供たちの主体的な学習活動を保障する学習展開となる。
・「発見」することは、新たな知の広がりを意味する。それは学ぶ喜びにつながり、学習意欲の高まりとなる。
・「発見」は、一人一人違うことが多い。その一人一人の「発見」が、学級全員の学び合いを通して、学級全体の「発見」に発展する。それは、その単元での習得すべき内容であることが多い。

■「(学び)を広げよう」をキーワードにするよさ
・学習の最終ゴールを「広げる活動」にすることにより、学習の目的意識が高まる。
・「広げる活動」は、一人一人が多様な内容で、多様な表現方法をすることが多い。それは一人一人のよさを発揮させることにつながる。
・「広げる」ためには、今までの学びを振り返ることになる。それは、自分自身の学びを自覚することになる。

2 具体的な単元構成

 単元「発見!わたし、ぼく流野菜の食べ方」(5年生1学期実施)から、その単元構成について紹介をする。

①単元の導入段階で強烈な動機づけを
 単元の導入段階で、その単元の学習内容に広がる強烈な意識づけと視点づくりが必要である。教師はそのための布石を打つ。

例・「とりたて野菜、最高」(1・2時間目)

②自分なりの調べ活動で、知識を蓄える
 家庭科においても調べ活動をどんどんさせるべきと考える。そこで得た知識がベースになり、子供の学習意欲は高まり、知識は広がりを見せる。

例・調べたことを画用紙に分かりやすくまとめよう(3時間目)

③試行錯誤から発見させる
 発見は自ら意図的に試みて検証した時に生まれる。そのために、試行錯誤の活動を保障すべきである。ただし、ある程度の知識を子供自身の力で蓄積していること、子供の力で獲得しえなかった基礎・基本的な内容は教師がきちんと教えることが前提である。

例・「発表・実技・観察」で知恵を身につける(4~5時間目)

④わたし、ぼく流を意識させる
 基礎・基本が定着したら、一人一人の思いを実現する方向性で内容を工夫する。それは、「わたし、ぼく流」という言葉でくくることができる。

例・わたし、ぼく流でまずは試し作り(6・7時間目)

⑤広める活動により、自分の学びの自覚を
 まとめの段階で自分の学びを広げる。「学級で・学校で・家庭で・地域で」と方法は多様である。それは、子供たち自身が自分の学びを自覚することにつながる。

例・わたし、ぼく流レシピを発見し、広める(8~11時間目)

3 他の単元でも応用を

 先の5つの単元構成の考えは、他の単元でも応用できる。たとえば、2学期の「発見!わたし、ぼく流ヘルシー野菜炒め」では次のような単元展開を考えた。(略)

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