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2016.09.01

【HP移行原稿】家庭科・たのしい実践原稿

家庭科・たのしい実践

 1 二つの「+α」

 家庭科の調理実習の時間は、子供たちにとって間違いなく楽しい。計画を立てることも、実際の調理も楽しい。そして何よりも、自分が作った料理のおいしさ。たまらない魅力であろう。
 しかしながら、その意欲が単なる「実習計画→調理」で終えるのはもったいない。
 単元構成をもっと工夫できるのではないか。通常の活動に何らかの「+α」を加えることによって、子供たちはより意欲的に学習をするのではないか。
 そう考えた。
 では、どんな「+α」が可能か。
 五年生の二学期の調理実習。野菜炒めの学習内容で、次の二つの「+α」を考えた。

 その1 「ヘルシー野菜炒め」という視点を組み入れる

 野菜炒めに「ヘルシー」という視点を加えることにより、調べる観点が深まる。「ヘルシーのためにはどんな野菜を選ぶか」「炒め方や味付けをどうすれば、ヘルシー野菜炒めになるか」というようにである。
 二つ目の「+α」は次の点である。

 その2 「発見」「わたし・ぼく流」「広めよう」をキーワードに

 単元を貫く学習キーワードがこれである。このキーワードを設定することによって、子供たちの単元構成の幅が広がる。今回の単元、「発見!わたし、ぼく流ヘルシー野菜炒め」では、これらをキーワードとすることにより、次のような学習活動の工夫につながった。

■「発見」→調査活動からの発見、試行錯誤からの発見
■「わたし・ぼく流」→自分なりの調べ活動、個性的な野菜炒め
■「広めよう」→学んだことを表現
 以下、具体的に紹介する。

 2 単元「発見!わたし、ぼく流ヘルシー野菜炒め」
(一) 「どうなっている?我が家の野菜料理」 (一時間)
 単元に入る前に布石を打つ。「一週間の夕食の野菜調べ」である。(課外で)
 ワークシートに「夕食のメニュー」「食べた野菜の種類」「思ったこと」の三つを毎日書くように指示をする。そして、最後の日に「一週間の調査で思ったこと、気付いたこと」を書くようにする。
 この夕食調べで子供たちは、今まで何げなく食べていた野菜に目を向けるようになる。事実、子供たちが思ったこと、気付いたことには、次のようなものが出てきている。
・夕食に野菜が多く入っていて、家族の体のことを考えていると思った。
・野菜にどんな栄養があるのかなと思った。
・野菜を食べるとどんな効果があるのかな。
・ニンジンがたくさん出てきたのはなぜか。

 一時間目は、この夕食調べを活用して、ヘルシー野菜炒めについて自分が調べたい課題を決める時間である。
 最初に夕食の野菜調べで思ったこと、気付いたことを発表させる。先の例が出てくる。
 むろん、発表させっぱなしではなく、「どうしてそう思ったの?」「もう少しくわしく説明して」と言って、子供たち一人一人の思いや疑問を深めるようにした。
 子供たちの野菜に関わる思いを深めたところで、次のように言う。
 みんな野菜についていろいろと考えました。今回は野菜炒めに挑戦します。それも「ヘルシー野菜いため」です。
 ここで「ヘルシー」の意味を確認する。「体にいい」「健康にいい」と押さえる。

 ヘルシー野菜いために学習したいこと、疑問に思うことを書きなさい。

 単元の導入で、これからの学習の見通しを持たせるために行った発問である。
 「炒めておいしい野菜は何か。」「野菜にはどんな栄養が入っているか。」「いためる時に、油はどれぐらい入れるのか。」「野菜を切る時に、どのような大きさにするのか。」「ビタミンが多い野菜は何か」等、数多くの発表が出てきた。
 それらを次の五つにまとめた。
① 野菜を炒めたときに、カロチンとビタミンはどうなるのか。
② 炒め道具の使い方はどうしたらいいのか。
③ どんな野菜にどんな栄養が入っているのか。
④ 炒め方の工夫(火加減、順序)は何か。
⑤ 健康によい味付けはどんなのがいいか。
 それぞれ「ヘルシー」を考える点では重要なテーマばかりである。
 これらのテーマについて一人一つ選ばせる。
「家の人に聞く」「試してみる」「本で調べる」といったように調べる方法を確認して、次の時間まで、家庭学習で自分で調べることにした。

(二) 自分のテーマをまとめよう(二時間目)
 一時間目のテーマを画用紙(B4サイズ)にまとめる時間である。
 二十二人中十九人が何らかの調べ活動をしてきた。家の人からの聞き取りはもちろん、図書館で調べる子あり、実際に家で野菜炒めをしてみる子ありと意欲的に取り組んだ。残り三人は資料がないということで、教師の資料を提供することにした。
 わかりやすくまとめるには、どんな点に注意したらいいですか。
と聞くと、「マジックで目立つように書く」「図を書いて、分かりやすくする」「見出しを入れて、パッと何のことかわかりやすくする」「思ったことも書く」と書き方を中心とした発表が続く。
 そこで、『大事な事が抜けています。それは「どうすればヘルシーになるか」ということです。そのことを考えて画用紙にまとめなさい。』
と指示をする。子どもたちのまとめた例とテーマ例は次の通りである。 

★子供たちの書いたテーマ例
1 「カロチンとビタミンのへり方」
2 「フライパンの使い方」
3 「野菜の栄養」
4 「自分流ヘルシー野菜いため」「誰でも食べれる野菜いため」
5 「我が家の味付け」「おいしい味付け」「健康にいい味付け」

(三) どのような工夫をすればヘルシー野菜炒めになるの?(三・四時間目)
 この時間は二時間目に自分たちが調べた内容を発表しあい、さらに具体的に実技やその様子を観察することによって「ヘルシー野菜炒めに関わる知識」を身につけるものである。
 教科書のみで授業をしているのであれば、教師が教え込む場面である。
 しかし、今回は「カロチンとビタミン」「道具」「野菜の栄養」「炒め方」「味付け」と、五つの観点に沿って子供たちがすでに調べている。
 それを発表させ、さらに実技・観察で十分に目的の知識は身につけることが可能である。
 具体的には次のような形で進めていった。
① 各項目のうち代表一人が発表。他に調べてきた子供たち(2~4人)は付け加えをする。
② 発表後、質問・意見・感想で交流をする。
③ 発表内容で実技が可能なものは実際に試してみる。そしてその様子を観察する。
④ 観察結果に関わる教師の発問により、必要な知識を得る。

【例・炒め方】
 炒め方では、野菜の大きさはそろえます。これは、火のとおりが同じになるようにするためです。また、かたい物から順に炒めます。
 同じかたさにすることが大事です。もちろん強火です。
 もし、フライパンに火が入ったら、コンロの器具せんをしめ、なべのフタなどをかぶせて消します。(発表の一部)
 これに他の人の付け加え、質問や意見交流のあと、次のように指示をした。

 では野菜炒めで今のような工夫をするとどう変わるでしょうか。実際に試してみましょう。次の試し作りをします。
1 強火と弱火のモヤシ炒め
2 ニンジンとキャベツの同時炒めと、ニンジン先キャベツ後炒め
です。お願いしていた皆さん(それぞれ代表で炒めてくれる人を事前に依頼し、材料を切ってもらっていた)、お願いします。他のみんなは観察します。

 子供たちは代表の子供たちの試し作りの様子を実際に観察する。気付いたことを子供たちはどんどんメモをしていった。野菜炒めができた時点で試食をして、食感を確かめていた。

わかったこと・思ったことを発表しましょう。
★1 強火と弱火のモヤシ炒め
・弱火は時間がかかって、かたかった  
・弱火はカロチンが吸収できなくなると思った 
・強火の方がだんぜんおいしい
・弱火は生っぽい
★2 ニンジンキャベツの同時炒めと、ニンジン先キャベツ後炒め
・同時に炒めたニンジンは固く、別々だとやわらかかった 
・別々にやった方がおいしかった
・同時だとキャベツがこげてしまう 
・同時に入れてはいけないことがわかった

 強火や別々に炒めるいったそれぞれの工夫は、何を考えていると言えますか
・栄養  ・健康  ・ヘルシー

 このように、「調べる→試しの活動」によって子供たちは強火で炒めること、野菜の固さに応じて工夫して炒めることを学んだ。(他の4項目についても似た活動を行ったが略)

(四) 試してみよう、ヘルシー野菜炒め(五・六時間目)
 前の時間までに身につけた知識を今度は全員が実際に試してみて、「わたし、ぼく流ヘルシー野菜炒め」を決定する時間である。
 ある程度知識が身についたので、すぐにヘルシー野菜炒めの本番というパターンも考えられるが、子供たちは調理実習が二回目。実際に自分たちで道具の使い方も慣れる必要がある。また、自分でいろいろな材料を試したり、様々な味付けもやってみたいということで、
試行錯誤をさせることにした。
 といっても、いくつかの観点を示して行うことが大切である。
 子供たちと話し合い、次の三つの観点をもとに試し作りをすることにした。
■材料選びを工夫しよう
 ・栄養のある野菜がいい
 ・野菜の組み合わせも考える
■調理方法を工夫しよう
 ・道具を正しく使おう
 ・切り方や順番も考える
 ・カロチンやビタミンをとる方法で
■味付けを工夫しよう
 ・健康にいい味付けを考える
 ・健康を考えた自分の好みで
 初めて子もいるので、当然失敗も出てくる。試しの活動なので、それもよし。反省を次回の本番に生かそうとしていた。

(五) ぼく、わたし流ヘルシー野菜炒めに挑戦!(七~九時間目)
 今まで学んだことの集大成。いよいよヘルシー野菜炒めに挑戦である。
 まずはレシピ作り。話し合いをして次の項目を入れることにした。
★工夫したタイトル ★道具 ★材料 ★作り方(イラスト入り) ★注意点やポイント ★感想 ★その他自分で工夫する
 子供たちの希望で最後に、できた野菜炒めの写真を貼りつけることとした。
 そして、いざ本番。ピーマン、キャベツ、ブロッコリー、ニンジンといった材料から子供たちは作り始める。前に試し作りをしたので、子供たちは自信を持って調理をする。
 味付けも塩・コショウ、オイスターソース、しょうゆと様々。使う材料・炒め方・味付けとヘルシーにこだわった自分流野菜炒めができていった。
 プーンと風味豊かな香りをそのまま写真でパチリ。自信作の出来あがりである。

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