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2016.09.05

【HP移行原稿】「よりよい生活人」を目指す新家庭科教育3

提案4 家庭科情報リテラシーを高める

1 消費者教育における家庭科情報リテラシーの必要性

 今後、情報化社会はより一層進行し、家庭科に関わる情報も今以上に増えてくるであろう。その中でも、特に消費活動に関する情報は、子供たちにとって身近なものである。
 事実、子供たちは日常生活の中で、お菓子、衣料品、玩具類等様々な消費活動をお粉っている。また、そのような消費活動を促進するテレビコマーシャル、雑誌等での宣伝も盛んである。
 そんな状況の中で、子供たちに必要なのは「情報リテラシー(情報を読み解く力)」である。情報を、自分なりの見方で適切に生活の中に取り入れ、判断をし、消費活動の意志決定をすることが大切と考える。

2 実践例「発見!パッケージの秘密」

 現在購入する商品のほとんどが、パッケージされている。そのパッケージには、実に多くの情報が含まれている。ところが、子供たちが実際に商品を購入する際に、そのパッケージをよく見るという子の割合は低い(我が学級で3割ほど)。
 そこで、商品のパッケージの情報に着目させる授業を行った。

 教室にズラリと並んだ商品のパッケージ。お菓子の袋、カレー粉の箱、空き缶等々。子供たちが家庭から持ってきたものである。
 それらを最初に紹介をする。「あっ、それ食べたことがある」「へえ~、そんなも物もあるんだ」と子供たちは興味深そうにパッケージを見つめる。そこで、子供たちに聞く。

 いろいろな商品のパッケージを見て、わかったこと、思ったことを書き、発表しなさい。

 さっそく、実際にパッケージを手にして分析する子供たち。次のようなことに気付いた。

■わかったこと、気付いたこと
・中に入っているものが書いてある  ・保存方法がある  ・注意書き(してはいけないこと)が書いてある  ・作り方がくわしく書いてある  ・一口メモもある  ・メーカーがわかる  ・栄養やカロリーがわかる  ・賞味期限が書かれている  ・量がわかる  ・原料がわかる  ・どこの国から来たものかわかる  ・おまけのプレゼントを書いている  ・お客さま相談室の番号が書いてある  ・ホームページや会社の住所が書かれている  ・調理例がある・・・・等

■思ったこと
・栄養のことが書かれているのは、食べる人のことを考えているんだと思った。
・消費期限が書かれているのは大事なことと思った。
・実際にものの写真があると、その中身がよくわかる。
・いいことをたくさん書くと買ってもらえる可能性が高いのでは。

 たくさん出たところで、子供たちに「これらの情報がもしパッケージになかったら、どんなことが困りますか」と聞く。
 「商品の苦情が言えない」「作り方がわからなくて困る」「いつまで大丈夫な食べ物か分からない」等、これまた多くの反応が出てくる。パッケージの有用性について、少しずつ子供たちは感じとってきた。

 では、それらのパッケージの工夫には、どんなよさがあると言えますか。

 改めてパッケージの情報を得ることのよさを問う発問である。子供たちからは、次のような反応が出てきた。

・作り方が書かれていると初めて買う人にとっても大丈夫だ。
・注意点があると危険がない。
・買うときに安心する。(賞味期限等)
・自分が商品を買うときの目安になる。
・会社名や電話番号があれば、品質保証している・・・等

 このように子供たちの視野は広がった。
 しかし、パッケージの情報にも「買わせるため」の誇大宣伝の例もある。そこで、子供たちに「パッケージを見て買ったけど、失敗した点はありませんでしたか。」と聞き、例を出させた。よさと同時にこのような視点も必要であろう。
 最後に、「あなただったらパッケージを見て、これからどんなことに気をつけて商品を購入しますか」と問い、自分なりにまとめさせて授業を終えた。子供たちは、この授業で次のような感想を持った。

・はじめてよくパッケージを見ました。いろいろな事がわかりました。栄養もわかるし、どこで作られたかもわかるから、パッケージはいろいろと便利だと思いました。
・パッケージがあるといろんなことが分かって、役に立つことがわかりました。今度から、カロリーや作り方をちゃんと見て、おいしく食べたいと思います。
・いつもあまり気にかけていなかったパッケージも意外にとても大切だったと改めて思いました。これからはよく読みます。
・パッケージというのは、私が考えているよりも重要な役割があることがわかった。特に、保存方法や会社名などの意味がわかった。

 感想からわかるように、子供たちのパッケージに対する視野が広がる授業となった。

3 その他の取り組み

①他教科と関連づけて取り組む
 社会科の情報の学習で、「発見!テレビコマーシャルの秘密」という学習を行った。
 これは、テレビコマーシャルが、商品の購買意欲をそそるためにどのような工夫をしているかということを分析するものである。
 子供たちに人気の高いテレビコマーシャル(2000年11月時点)の「ポッキー」「ジョージアの缶コーヒー」について、実際のコマーシャル映像を見ながら分析させた。
 「人気のあるタレントを使っている」「音楽がおもしろい」「思わず食べたくなるようなお菓子の写し方をしている」等、子供たちはコマーシャルでの工夫を発見していった。と同時に、「自分たちがその商品のターゲットになっている」ことにも気付いた。
 商品のテレビコマーシャルについての見方が深まった授業となった。

②家庭学習で取り組む
 先に例を出したパッケージやテレビコマーシャルの分析は、家庭学習でも取り組むことができる。
 授業で興味を持った子供たちは、さっそくパッケージの秘密の追究をさらに行ったり、テレビコマーシャル日記を書いたりした。
 必要に応じて教師はノートをコピーし、学級の掲示板に貼った。そのことによって子供たちの興味や情報の見方もさらに深まった。

 何も1単位時間の授業でなくても、このような日常的な取り組みで、よりよい消費者教育は可能と思われる。

Ⅲ 新家庭科PR作戦

 保護者の中には、自分の記憶に残っているイメージから、「家庭科は裁縫と調理の技能を習得する教科」ととらえている方がいる。
 また、教員でも「家庭科の研究授業を見たことがない」という人は多い。
 「よりよい生活人」を目指すためには、家庭との連携は不可欠であるし、家庭科教育のよさをあまり知らない教員へのPRも必要と考える。その活動の一環として、次のようなことを行っている。

1 保護者に直接的、間接的に学習活動に参加してもらう
 保護者の家庭科教育に関する理解を深めるには、授業に参加してもらうのが一番である。日常の授業に参加してもらうのが大変なのであれば、授業参観の時に家庭科の授業を行い、その中で「家庭での工夫」について話をしていただくことも可能である。
 また、子供たちの家庭での聞き取り活動や、学習したことを保護者の協力のもとに家庭で実践してみることは「間接的」な学習活動への参加となる。
 工夫次第で保護者の学習活動への参加は可能なのである。

2 学級懇談会および学級通信を最大限利用する
 懇談会で話をするだけではなく、家庭科の授業の様子をビデオで見せる。学級通信を通じて、授業の様子および家庭科教育に対する考え方等を保護者に知らせている。
 家庭での話題に一つになっている。

3 地域人材活用は教職員への理解へのチャンス
 地域人材を活用した授業は、日常あまり家庭科教育に関心がないと思われる教職員への理解を図るチャンスである。授業終了後にその成果を、職員集会等で発表することにより、教職員の関心も高まるであろう。

4 ホームページによる発信で、実践の共有財産化を
 自分の実践を公開する有効な方法の一つとして、ホームページによる発信がある。私自身もホームページを作成し、今までの家庭科実践を掲載している。


Ⅳ おわりに
 この1年間、岩手県家庭科教育研究会の授業者として、家庭科教育についてたくさん学ぶことができました。今まで自分なりの教材研究はしてきたものの、本格的に研究をしたことは初めてでした。学べば学ぶほど家庭科教育の面白さ、奥深さを感じました。その点で、たくさん学ばせてもらった県家研下閉伊地区の会員の皆様に感謝いたします。
 また、1年間の実践をまとめる貴重な機会を与えてくださった筑波大学附属小学校の町田先生にも感謝申し上げます。ありがとうございました。
 むろん、家庭科教育の実践についてはまだまだです。自分が学んだことをさらに今後の実践で生かしていきたいと考えています。

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