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2016.09.04

【HP移行原稿】「よりよい生活人」を目指す新家庭科教育2

提案2  「総合」で家庭科を強くする

1 総合的な学習を活用して、家庭科を強くしよう

①「総合的な学習→家庭科」という視点の重視
 総合的な学習は、家庭科における「よりよい生活人」の強力な援軍である。ただし、それも「いい関係」であった場合である。次のようにして、家庭科と総合的な学習の「いい関係」を深めるべきと考える。
 総合的な学習と家庭科との関わりを考えると、「家庭科が総合的な学習にどのように結び付いているか」という例が多いのではないか。たとえば、「家庭科で学習した衣服に関わる製作技能が、福祉交流でのプレゼント作りに役立つ」「調理でのゴミの処理や住まい方での工夫が、環境教育に発展する」といったようにである。
 この視点は、家庭科と総合的な学習を考える基本である。
 それに加えて、「総合的な学習→家庭科」という視点をより重視すべきであると考える。
 総合的な学習での経験を、どんどん家庭科の学習に生かすという視点である。

②例・総合的な学習「手作り名人を見つけよう」での「ひゅうず」調べ
 5年生の総合的な学習で、地域の伝統的なお菓子の「ひゅうず」を調べたことがあった。
 これは、「手作り名人を見つけよう」という単元の中で、「地域に伝わるひゅうず作りの名人」も「手作り名人」ということで調べたのである。
 「名人に会う前に、自分たちが『ひゅうず』について知らなければいけない」ということで、子供たちに「調べること」を考えさせた。次のようなものが出てきた。

■ひゅうずという名前の由来と歴史
■ひゅうずの作られている地方
■ひゅうずの作り方
■ひゅうずの種類と売られているお店
■ひゅうずの栄養といいところ
■ひゅうずの思い出

 さっそく子供たちは調べ始める。家の人からの聞き取りだけではなく、親戚に聞いたり、インターネットの資料を活用したりして、ひゅうずが古くから家庭での手作りお菓子であり、昔の子供たちにとっては実に思い出深い味であることに興味を示した。
 また、家庭によって作り方の違いがあることや様々な種類のひゅうずが売られていることを知り、いろいろと工夫できるお菓子であることを知った。
 このひゅうず調べにより、実際にひゅうず作り名人(地域人材)をお迎えした時には、価値のある学習をすることができた。

③総合的な学習が豊かにしたもの
 では、子供たちが総合的な学習で行った「ひゅうず調べ」の経験は、家庭科にどんな点で役立つのか考えてみる。次のような点で、メリットがあったように思われる。

★総合的な学習が家庭科学習の動機づけになる
 →楽しい体験が、食領域での意欲につながるであろう
★総合的な学習で得た調べ学習での視点が、家庭科学習に生きてくる
 →「由来」「意義」「栄養」「作り方」といったような「食べ物調べ」に対する視点が形成された
★地域人材のさらなる活用
 →総合的な学習での地域人材は、家庭科でも活用可能な場合がある

 このように総合的な学習で学んだことは、家庭科の学習を豊かにすると考える。それどころか、教師自身が家庭科を、総合的な学習を活用して積極的に豊かにさせるべきと考える。家庭科自体の授業時数も内容も新学習指導要領では減るのである。この発想は、その対応策の一つと考える。
 そのためには、学校の家庭科および総合的な学習の年間指導計画の関連を見通すことが大切であると考える。
 特に、総合的な学習は3年生から始まる。3年生から4年生までの総合的な学習で、家庭科の学習を豊かにする経験や視点の蓄積が、これからの家庭科教育の武器の一つになるのではないかと思う。

2 家庭科内での「知の総合化」を目指す

 何も総合的な学習ばかりが、家庭科と関連づいているわけではない。他教科との関連も「よりよい生活人」を目指すために重視したい。
 たとえば、ごみについて、4年生の社会科で学習した知識を活用することができる。ごみの種類、その分別の方法についてである。
 ただ、教科との関連で留意しなければいけないのは、あくまでも他教科で得た知識は、「学習を支える一部の知識」にしかすぎないということである。「油を排水口にそのまま流して処理してはいけない」といった知識を得ていても、それが家庭科の場合に実行できなければ意味がない。
 それを前提とした上で、他教科で得た知識も積極的に活用できるようにしていきたい。
 さらに他教科よりも推進していくべきは、「家庭科内での『知の総合化』」である。
 新学習指導要領によって、複数の領域を組み合わせての学習がしやすくなった。そこで、大胆な単元の編成が可能ではないかと思われる。
 たとえば、「冬のくらし」では次のような内容構成が考えられる。

例:単元名「冬のくらしを豊かに」(6年生)
■学習内容
 ・冬に水道代や電気代が上がる理由の追究
 ・街中での冬のくらしのすまいの工夫発見
 ・あったかい手作りおやつはこれ
 ・我が家の寒さ対策
 ・作ってみよう!冬に役立つものを
 ・冬のくらし新聞を作ろう

 一つ一つの学習内容が、子供たちの意識の中でつながっているので、より効果的な学習成果がうまれるのではないかと考える。ただ、このように総合化する場合には、安易な内容の統合をさけるべきである。子供たちの知の系統性や学習意欲の吟味が不可欠なのは、言うまでもない。

提案3 「家族のよさ・地域のよさ・日本のよさ」を伝える視点で

1 子供たちに「誇り」を持たせる

 学習をする中で、子供たちに「家族のよさ・地域のよさ・日本のよさ」を感じ取らせることが大切だと考えている。自分自身の生活の根本のよさを感じることは、「よりよい生活人」になることに直結するものと思うからである。
 「家族のよさ・地域のよさ・日本のよさ」を知ることにより、「家族っていいな」「自分たちの地域や国にはこんなすばらしいことがあるんだ」といった「誇り」を持つであろう。

 国際化の波が教育界にも押し寄せている。総合的な学習で国際理解教育も盛んである。こういう時代だからこそ、「自分の家族のよさ」「自分の地域のよさ」「自分の国のよさ」を堂々と語ることができる子供たちに育ってほしいと願う。

 何も1時間、「家族のよさ」「地域のよさ」というように抽象的に考えさせる必要はない。具体的な事例の中で子供たちが意識化するような手立てをとっていくことが大切と思う。場合によっては、5分程度のちょっとした話でも可能である。
 そのような観点から教材開発をしていくことが大切と考える。
 たとえば、「よりよい生活人の見本、家族から『家庭での仕事のこつ』を学ぶ」「日本に伝わるくらしの伝統行事をさぐる」といったようにである。他にも地域の特産物とその調理法、地域にある住環境等、素材は幅広い。

2 例1「よりよい生活人の見本、
      家族から『家庭での仕事のこつ』を学ぶ」

 5年生最初の単元は「仕事、任せて大作戦」であった。
 家庭での仕事について考え、実際に自分ができる仕事について実践してみるというものである。日常でお手伝いをしている子がほとんどであったが、そのお手伝い以外に1週間、家の仕事を行うというものである。「玄関そうじ」「食事作り」「洗濯物の後片付け」等、子供たちは自分の興味のあるテーマを選んだ。
 自分が選んだ仕事については、ふだんしているわけではないので、当然わからないところが出てくる。そこで、次のように指示をした。

 家族から「家庭での仕事のこつ」を聞きなさい。それをあとで「5年生・家族の仕事百科」にまとめます。

 家庭での仕事については、やはり母親や祖母はプロである。子供たちは1週間、家の人から学んだことをもとに実践をした。そして、今まで気付かなかった「家庭での仕事のこつ」を各自がつかんだ。
 それを表に一人一人まとめた。全員分を閉じると、「5年生・家族の仕事百科」の完成である。読んでみるとなかなかおもしろい。
 お家の人へのお礼の意味もあって、授業参観(算数)の冒頭の時間を使い、その「仕事のこつ20秒スピーチ」を行った。
 子供たちの一人一人の仕事での奮闘ぶりや実際に道具を持ってきてこつを紹介する度に、大きくうなずいたり、思わず拍手をしたりする家の人もいた。いい場面であった。
 単元終了での感想では、「お母さんから、仕事のこつを学んでもの知りになることができ、よかった」といったことが多く出てきた。
 家庭での仕事はやはり「家庭での仕事のプロに」に聞くのは一番、ということを子供は実感した。

3 例2「おせち料理の意味は?」
 日本の伝統行事の中でも「おせち料理」は、子供たちになじみの深いものである。
 しかし、その料理自体の知識はあまり家庭で話されることがないという。そこで、2学期最後の家庭科の最初の時間を使い、「おせち料理の意味は?」という学習をした。(15分ほど)

1 おせち料理にはどんなものが入っていますか
 (黒豆、伊勢海老、田作り、かまぼこ・・・等いろいろと出てくる。「あまり食べないといった」声も聞こえる。)

2 実は一つ一つの料理にはいろいろな願いがこめられています。
・黒豆の「まめ」には、まめに「  」という思いがあります。「 」には何が入るでしょうか。(すぐに「働く」という言葉が出てくる。)そうですね。健康に働けることは今も昔も大切なことです。さらに関東地方では、「しわがよるまで長生きできるように」ということで、黒豆をしわがよるまで煮込むそうです。
・数の子も縁起がよいとされています。何かに恵まれるからです。(子供)それだけではなく、「よいことに数々恵まれる」とも言われています。
・栗きんとんも縁起のよいものです。漢字では、「栗金団」と書きます。「金」がたまるとされています。
・かまぼこは、どこが縁起がいいのでしょうか。(色、紅白) 赤色は難しいことは退ける、白は清らかなことを表しています。

3 おせち料理はこのように一つ一つ願いが込められているのです。

★子供たちの感想
・私が知らなかったお正月のことがわかってうれしいです。子宝に恵まれるように、私はお正月に数の子を食べようと思いました。
・正月は今まで何となくやってきたけど、こうして学習してみると由来がたくさんあることがわかりました。
・大掃除は何となくめんどうくさいと思っていたけれど、必要があったことがわかりました。
・ぼくはおせち料理をあまり食べないから今度は食べるようにしたいです。

 感想からもわかるように、子供たちは改めて「おせち料理」に関する意味を知ることができた。
 このように伝統行事やならわしで衣食住に関わることはけっこう多い。「お月見」「七五三の晴れ着」もそうである。それに関わる学習を、月に一回ぐらい10分程度で行う。子供たちは今まで知らなかったことが多いので、喜んで話を聞く。
 私自身もこのようなことを伝えていくことの大切さを感じる。

4 「家庭・地域・日本」のよさを伝えることのメリット
 
 「家族のよさ・地域のよさ・日本のよさ」を伝える視点を持つことによって、次のようなメリットがあると感じている。

 ・家族を含め、その道の専門家から直接学ぶことができるので、子供たちの学習意欲が高まる。同時に、人から学ぶことは生き方が学ぶことにつながる。
 ・家族・地域の一員としての自覚や誇りが高まる。
 ・学習する対象が身近なことが多く、今までの生活経験の中で得た知識が活用できる。

 そのような教材開発をするためには、まず教師自身が「家族のよさ・地域のよさ・日本のよさ」を学ぶことが大切と考える。そして、教師自身が「おもしろい」「感動した」というものは、子供たちもやはり興味を持つ。そのような内容をたくさん蓄えることの必要性を感じる。

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