「風景を繋げる」
JR東日本の新幹線車内誌「トランヴェール」に,沢木耕太郎さんが連載をしている。
毎回,毎回,身近な出来事を上質な文章で描いている。思わず毎回引き込まれる。
今回は「風景を繋げる」というタイトルだった。
今月号は秋田の話だった。高校時代に夜行列車で秋田に向かったが,今後悔しているのは,旅の移動に夜行の乗り物を使っているということ。そのことを次のように書いている。
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あるとき,それはずいぶんもったいないことだったな思うようになった。その風景とは,一期一会,もう二度と巡り合えないかもしれなかったからだ。
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この気持ちに共感する。若い頃には自分が未来あちこちに行けるものだと,漠然と思っていた。しかし,日々の仕事や雑事に時間を割くと,そういう機会はなかなかないとわかった。そして,自分の人生の残り時間も意識している…今がそのような感じである。
沢木さんも思い立って,高校時代に夜行で移動した風景を改めてローカル線で移動した。それは「ありきたり」のものだったが,その中でもハッとさせられる瞬間があったという。自分の中で途切れていた風景が「繋がった」とも書いていた。
このようなエッセーを読むと,自分も秋田のローカル線の風景を改めて見たくなる。もう40年近く前に通っていた,奥羽本線の通学電車の風景だ。今一番見たい風景かもしれない。
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